今回はレイアウト時に注意が必要な強毒サンゴをいくつかご紹介します。
本記事で分かること
・サンゴの「毒」とは?
・接触注意な強毒サンゴ
・接触への対策法
サンゴの「毒」
刺胞
まず、サンゴの「毒」とは何でしょうか。
サンゴは「刺胞動物」という動物で、これはクラゲやイソギンチャクと同じ仲間です。
刺胞動物の「刺胞」はカンタンに言うと毒のトゲが入った細胞のこと。サンゴやクラゲ、イソギンチャクはこれを触手にたくさん持っており、エサを捕まえたり、身を守ったりするのに使います。
この「刺胞毒」がサンゴが持つ毒としてもっとも代表的なものです。
スイーパー触手
スイーパー触手はナガレハナサンゴやアザミサンゴなどの一部のサンゴは「スイーパー触手」という特別な触手を持っています。
これは非常に強い刺胞毒を持たせた攻撃用の触手です。
スイーパー触手は別のサンゴを攻撃するための触手です。
サンゴは動けないので、隣の別のサンゴが成長してきてぶつかると場所の取り合いになってしまいます。
その場所取り合戦に勝つための手段として、強力な毒を持つスイーパー触手をなびかせて自分の領域を確保しているんですね。
隔膜糸
隔膜糸(かくまくし)も一部のサンゴが使う自衛手段です。
サンゴ1匹1匹の体はドラム缶のように中が空洞の筒状になっており、その空洞の部分は胃(胃腔)です。そして隔膜糸はその胃の中に普段はしまわれています。
つまり、通常の触手やスイーパー触手とは違い、普段は外に出していません。
これもスイーパー触手と同じで、別のサンゴと触れ合ったときに場所取り合戦に勝つための手段として使います。
他のサンゴが触れ合ったり、近くにいるのを察知すると胃の中から隔膜糸をぞわぞわと出してきて、他のサンゴを直接消化してしまいます。
そうなんです。隔膜糸は直接触れ合うか、それに準ずるくらい近距離にしか使われない分、その威力は絶大。
隔膜糸に攻撃されたサンゴは触れられた部分が消化されてしまい、溶けます。
接触注意な強毒サンゴ!
危険度:★☆☆
バブルコーラル(ミズタマサンゴ)
バブルコーラルはLPSの中でも丈夫と言え、水質悪化に強く、光もそれほど強くなくていいので飼育しやすいLPSと言えるでしょう。
強力な毒を持つスイーパー触手を伸ばすこともあり、他のサンゴと触れ合ってしまわないように注意が必要です。
とはいえ、弱毒サンゴに比べると強いというだけで、ここから紹介する強毒サンゴの中ではまだまだ序の口です。
キッカサンゴ
キッカサンゴという名前で売られているサンゴは複数種がありますが、その特徴は「板状」または「ライブロックを覆うように」成長すること。
非常に美しく人気の仲間ですが、刺胞毒が強毒です。
これらのサンゴはあまり立体的に成長しないため、そのほかの立体的に成長するサンゴとの場所取り合戦に負けてしまいがちです。
そこでこの仲間は、強力な刺胞毒を持つことで自らのスペースを確保する手段に出ました。
成長も早すぎず触手を伸ばすわけではないので危険度は低いです。が、固定していないサンゴがキッカサンゴ類の上に落ちてしまうと、しっかり滅ぼされます。
危険度:★★☆
ハナガタサンゴの仲間
ハナガタサンゴの仲間も丈夫で飼育しやすいLPS。ハナガタサンゴ、マルハナガタサンゴ、コハナガタサンゴ、アザミハナガタサンゴなどの種類があります。
超絶強力な隔膜糸を持っており、直接触れ合ったサンゴは問答無用で滅ぼされます。
我が家でも上記のバブルコーラルがライブロックから落ちてハナガタサンゴを触れ合ってしまった際、ハナガタサンゴの隔膜糸でバブルコーラルが半分溶けました。
そしてバブルコーラルはそのまま衰退して消えました(泣)。
成長は非常にゆっくりな上、隔膜糸が届く範囲はせいぜい数cmなので置き場所には困りませんが、他のサンゴとの直接接触にだけはマジで注意です。
ハナサンゴの仲間(特にナガレハナサンゴ)
ハナサンゴの仲間は飼育が難しく、非常に美しいLPSとして有名です。
基本的にハナサンゴの仲間は刺胞毒が強く、毒に弱いカクオオトゲキクメイシやオオバナサンゴの周囲にレイアウトするのは避けた方がよいです。
特にナガレハナサンゴはスイーパー触手を10cm以上伸ばすことがあり、これに触れ合ってしまったサンゴは滅びます。
そしてさらに注意なのが、このスイーパー触手は非常にちぎれやすいという点。
水流ポンプなどと触れ合ってちぎれたスイーパー触手が水槽内を漂ってしまうと、もうさながら無差別放火のように触れ合ったサンゴにダメージを与え続けます。
幸いなことにハナサンゴの仲間は同じ仲間の中であれば、触れ合ってもダメージはほぼないか少なく済むので、レイアウト時にはまとめて設置するのがおすすめです。
危険度:★★★
アザミサンゴ
特徴的な骨格形状をしていておもしろいアザミサンゴ。
色も美しくかわいらしいサンゴなのですが、夜になるとスイーパー触手を15~20cmくらいも伸ばす困ったちゃんです。
そのためアザミサンゴの周囲20cmほどには他のサンゴを全く配置できません。
あまりにも暴君過ぎて飼育している人をそこまで見たことがありません。
水槽に設置するなら、右端か左端の角に設置するしかありませんね。
トランペットコーラル(オオナガレハナサンゴ)
ナガレハナサンゴの仲間に近く、飼育は難しいもののその美しさから人気のあるトランペットコーラル。
小細工なしで単純に刺胞毒が強毒です。
弱ってしまった魚であれば捕まえて食べてしまうくらいには刺胞が強力で、たまに「トランペットに魚が食べられた報告」を目にします。したがって当然ほかのサンゴに触れ合ってもまずいです。
特にトランペットコーラルは水を吸ったときとそうでないときで、体全体の体積がまるで異なります。膨らんだ時のサイズを考慮したうえでレイアウトすることをおすすめします。
【番外編】危険度:★★★
スターポリプ
あまり強毒サンゴがないソフトコーラルの中でも、スターポリプだけはヤバいです。
そのヤバい要因は①やや強い毒、②あまりにも早い成長、この2点に集約されます。
まずスターポリプの毒は「まあ強い」という程度。今回ご紹介したマルハナガタサンゴの隔膜糸には負けますし、弱いサンゴに勝てる、というくらいです。
しかし特にヤバいのが成長の早さ。
スターポリプは成長の遅いサンゴを毒でじわじわといじめながら、そのサンゴそのものを覆うように成長することで、あらゆるサンゴに勝てるポテンシャルがあります。
相手がマメスナなどのソフトコーラルでも、骨格を持つハードコーラルでも、そもそも覆ってしまえば問答無用で勝てる、それがスターポリプの生存戦略なのです。
私の水槽内でもいつの間にかカクオオトゲキクメイシの横に進出し、カクオオトゲを衰退させていたことがあります。
強毒サンゴの対策法
距離を置いて設置
もっとも簡単で単純な方法です。絶対に触れ合わない距離を置いてサンゴを設置すれば毒の被害が発生することがありません。
この際に注意なのが、スイーパー触手を伸ばすサンゴや水を吸って膨らむサンゴについては、その最大被害範囲を想定したうえで設置することですね。
ライブロックで壁を作る
サンゴとサンゴの間にライブロックを設置し、物理的にサンゴ同士が触れ合わないようにすれば被害が発生するべくもありません。
ライブロックだけでなく、シャコガイを間に設置するのもおすすめ。シャコガイはサンゴの毒の影響を受けないので、緩衝帯として使いやすいです。
同じ仲間のサンゴをまとめて設置する
これもおすすめの方法です。同じ仲間のサンゴは毒の影響を受けにくいので、まとめて設置すれば被害が起きにくいです。
特にナガレハナサンゴなどのハナサンゴの仲間はまとめて設置すると水流になびいている様子が非常に美しく映えるので、おすすめです。
サンゴを接着する
キッカサンゴやハナガタサンゴなど、効果範囲は広くなくても突然の事故で触れ合ってしまった際に大きな被害を出す強毒サンゴもいます。
そのような事故を防ぐ最良の手段は「接着」。極端な話、水槽内のすべてのサンゴを接着してしまえば、落下事故はまず起こりません。
水流で調整
ナガレハナサンゴやアザミサンゴなどのスイーパー触手を伸ばすサンゴにおすすめの対策です。
水槽内に一方向の水流があれば、スイーパー触手はその下流側にしかなびきません。
したがって流れの上流側に守りたいサンゴ、下流側にナガレハナサンゴやアザミサンゴを設置すれば、スイーパー触手による被害を減らすことができます。
まとめ
*サンゴの毒には「刺胞毒」「スイーパー触手」「隔膜糸」がある
*スイーパー触手の「バブルコーラル」
*上に落ちるとヤバい「キッカサンゴ」
*隔膜糸が最強すぎる「ハナガタサンゴの仲間」
*まとめて設置がおすすめ「ハナサンゴの仲間」
*スイーパーの神「アザミサンゴ」
*膨張時の大きさに注意「トランペットコーラル」
*覆いかぶさって滅ぼす「スターポリプ」
今回はレイアウト注意な強毒サンゴを7種類と、その対策法を紹介しました。
どのサンゴも強毒を持っていますが、それを上手くいなして美しくレイアウトできた時の喜びは大きいです!
皆さんもしっかり対策したうえで飼育してみてください!