「キッカサンゴ」はLPSの1種で、比較的飼育しやすく、美しい仲間です。
今回はキッカサンゴの飼育法とその際の注意点についてお話しします。
※一般に「キッカサンゴ(Echinophyllia属)」として販売されるサンゴの中には「Oxypora属」「Echinopora属」「Leptoseris属」などが含まれていると考えられ、学術的には必ずしもキッカサンゴのみではありません。しかし本記事では販売名「キッカサンゴ」のものをすべてキッカサンゴとして扱います。
本記事で分かること
・キッカサンゴの特徴
・飼育に必要な環境
・キッカサンゴの飼育法
・飼育の注意点
キッカサンゴの飼育早見表
キッカサンゴの飼育難易度についてまとめてみました。星の数が多いほど難易度や必要性が高く、少ないほど簡単になっていきます。
成長・増殖については星の数が少ないほどしやすいです。
水質の清浄さ | ★★☆☆☆ |
---|---|
光の強さ | ★★★☆☆ |
水流の強さ・複雑さ | ★☆☆☆☆ |
エサの必要性 | ★☆☆☆☆ |
毒性の強さ | ★★★★☆ |
成長・増殖の難易度 | ★★★☆☆ |
総合飼育難易度 | ★★★☆☆ |
キッカサンゴの特徴
見た目
キッカサンゴはLPSの仲間です。
平べったい形をしていて、岩などを覆うように増えていくタイプのサンゴです。
色の違いについて
カラーバリエーションは様々で、グリーン、オレンジ、レッド、イエローなどの他、グリーンとレッドが混ざり合った非常に美しいものも存在します。
全体的に非常に美しい蛍光色を持つものが多いため、人気のあるグループと言えるでしょう。
キッカサンゴを入手する
値段は主に群体の大きさやカラーの美しさによって変わり、3000円~15000円が相場です。
美しい群体は非常に高価になりますが、海水魚専門ショップに売られているのをよく見かけるので、入手自体は容易です。
ちなみに我が家で飼育する▼こちらの個体は5000円くらいでした。
キッカサンゴの飼育について
水槽
大きい水槽を必要としないため、30cmキューブ水槽程度で充分に飼育できます。
岩を覆うように成長するので置き場所を調整することで成長を制限しやすく、レイアウトの心配があまりないのがGOODポイントですね。
水質
硝酸塩に対する耐性は高めです。
一般的なソフトコーラルなどが飼育できるくらいの水質であれば十分です。
LPSなので、骨格成長のために微量元素は必要とする印象です。
ろ過方式は特に問いません。外掛けフィルターや外部フィルターで十分に飼育できます。
▼水槽のろ過を担うフィルターについてはこちら
水温
水温は25℃前後で管理するとよいです。
冬場はヒーター、夏場はクーラーでの管理をおすすめします。
▼水槽用のクーラーについて知りたい方はこちら
光
キッカサンゴは光合成をするので、飼育にはライトが必要です。
カクオオトゲキクメイシなどの一般的なLPSが飼育できる程度の光量(45cm水槽で合計30W程度のLED使用をイメージ)があれば問題ありません。
青や紫、紫外線の波長を強めに当てることでキッカサンゴの蛍光発色を促進し、色揚げを促すことができるので、青みの強いライトをおすすめします。
▼LPSの色揚げにおすすめのRX072eディープの使用感について
▼LPSの飼育や色揚げにおすすめのLEDライトについてはこちらでさらに詳しくお話ししています。
水流
水流は必要ですが、弱くても大丈夫です。
キッカサンゴは元々波あたりの弱い場所に生息するサンゴです。そのため水槽内でも水流は強い必要はありません。
キッカサンゴだけならフィルターからの水流でも十分に飼育できると思いますが、他のサンゴは水流を必要とするものが多いので、それらとの兼ね合いも考えると水流ポンプは使用した方が良いでしょう。
▼小型水槽におすすめの水流ポンプ
エサ
エサは与えなくても飼育できますが、与えると食べます。
ポリプと口が大きくないので、与える場合は粉末状や液状のサンゴフードにします。
与えなくても飼育は問題なくできるので、エサは成長を早めたい場合などに与えるのがおすすめです。
▼液体サンゴフードの「リーフエナジー」。水槽に規定量を入れるだけで給餌可能だが、サンゴに直接ぶっかけるターゲット給餌もとても楽しい。
▼粉末のサンゴフードでは「ソフトコーラルフード」もおすすめ
毒性
毒性はかなり強いです。
キッカサンゴから攻撃しに行くことはありませんが、他のサンゴが何かの拍子にキッカサンゴに触れたりキッカサンゴの上に落ちたりするとたちまち溶かされてしまいます。
ただし我が家ではサンゴ界最強クラスのヒラタオオトゲキクメイシと触れ合った際にキッカサンゴが負けてしまったので、必ずしも最強、というわけではないみたいですね。
成長しやすさ
キッカサンゴはゆっくりですが着実に成長するサンゴです。
岩などを覆うように成長する「被覆状」のサンゴであり、適した環境でプラグなどに乗せていると数か月でプラグを覆ってさらに外側に広がっていきます。
飼育の注意点
チョウチョウウオやヤッコとの飼育には注意
チョウチョウウオ類やヤッコ類には、サンゴを食べてしまうものもいます。
混泳は一部の属を除いて基本的にできませんので、事前のチェックが必要です。
また水槽の藻の掃除のためによく飼育されるフシウデサンゴモエビがキッカサンゴをつついてしまうというような話もあるため、混泳には注意が必要かもしれません。
また、サンゴが弱っていたりすると狙われやすくなってしまう点にも注意です。
▼ヒフキアイゴはサンゴを食べる?
ヤドカリに乗られたり落とされたりすることもある
海水水槽でよく飼育されるヤドカリはサンゴの上に乗ったり、歩く過程でサンゴを落としてしまったりすることがよくあります。
これらはサンゴにとって当然ストレスになるため、よいとは言えません。
キッカサンゴはLPSなのでこの辺はソフトコーラルよりもデリケートなので、あまりちょっかいを出されないような対策が必要です。
▼プラグを接着する際におすすめなアクアリウム用パテ
まとめ
*水質悪化には強い
*小型水槽でも充分に飼える
*水温は25度が安定
*エサは必要ないが与えると食べる
*光量は一般的なLPSと同程度。青系の光で蛍光色を引き出すのがおすすめ
*水流は弱くてもよい
*チョウチョウウオ類、ヤッコ類、ヤドカリの混泳には注意
*毒性はとても強い。他のサンゴとの接触に注意
キッカサンゴは全体的に飼育難易度が低めで、成長の早さも楽しめるのでLPS入門におすすめできるサンゴです。
青系の光をしっかりと当ててやると非常に美しく光るので、セットで使うとキッカサンゴの魅力がより引き出せます!
気になったらぜひ飼育してみてください。
※本記事を執筆するにあたり使用した参考図書
「サンゴとサンゴ礁のはなし 南の海の不思議な生態系」本川達雄
「日本の有藻性イシサンゴ類~種子島編~」国立環境研究所 生物・生態系環境研究センター
「サンゴを上手く飼うための本 飼育環境・難易度別で理解するサンゴカタログ」