アカホシカニダマシはイソギンチャクと共生することが有名な甲殻類で、マリンアクアで飼育することも可能です。
今回はアカホシカニダマシの飼育法とその際の注意点についてお話しします。
本記事で分かること
・アカホシカニダマシの特徴
・飼育に必要な環境
・飼育法
・飼育の注意点
アカホシカニダマシシの飼育まとめ
アカホシカニダマシの飼育について簡単にまとめてみました。
水槽の大きさ | 30cm水槽~ |
---|---|
環境変化に強いかどうか | やや強い |
水温 | 25℃ |
食性 | プランクトン食/肉食 |
性格 | まじめ |
魚や他の生体との相性 | 他種:ベラ類、ゴンべ類、フグ類、カワハギ類などとは不可 同種:ペアまで可 |
サンゴとの相性 | 良好 |
特記事項 | 実はカニじゃない |
これらについてこの先でお話ししていきます。
アカホシカニダマシの特徴
見た目
大きさは最大で5cmほどです。
「アカホシカニダマシ」の名の通り、体には赤い斑点があります。
赤い斑点が大きなタイプと細かいタイプがいて、前者は「アカホシカニダマシ」、後者は「コホシカニダマシ」と以前は呼ばれていましたが、今では「アカホシカニダマシ」に統一されています。
カニだけどカニじゃない
アカホシカニダマシは見た目は完全にカニですが、カニではありません。
実はヤドカリの仲間である「異尾類」に属しています。
エビやヤドカリの仲間は進化が進むと「カニ化」するという傾向があるらしく、アカホシカニダマシもその類の生きものということですね。
イソギンチャクとの共生
アカホシカニダマシは自然界では大型のイソギンチャクに共生することで身を守っています。
基本的にはハタゴ、イボハタゴ、アラビアハタゴなどのハタゴ系のイソギンチャクと共生しますが、シライトなどの他の大型のイソギンチャクと共生することもあるようです。
水槽内ではサンゴイソギンチャクなどとも問題なく共生するでしょう。
アカホシカニダマシの真骨頂はイソギンチャクとの共生なので、飼育する際にはイソギンチャクがあると自然な生態を観察できて楽しいですね。
ただイソギンチャクは飼育のハードルが高い部分もあるので、無しでの飼育でも全然大丈夫です。
アカホシカニダマシを入手する
海水魚を販売しているショップや通販などで購入できます。
それなりに人気でちょくちょく入荷します。値段は1匹1000~2000円くらいです。
アカホシカニダマシの飼育について
必要な水槽の大きさ
アカホシカニダマシは5cmほどになります。
環境変化に対しては丈夫な方なので、飼育は30cmキューブ水槽くらいから可能です。
食性・エサ
メインとなる食性はろ過食性(フィルターフィーダー)です。
アカホシカニダマシは動き回ることのできる甲殻類としては珍しく、海中のプランクトンや有機物を熊手のような「顎脚(がっきゃく)」でこし取ることで食べます。
海水水槽ではプランクトンをあげるのは難しいですが、「ソフトコーラルフード」などのサンゴ用の粉末フードなどをスポイトで与えると、顎脚を使って喜んで食べます。
また冷凍ブラインシュリンプや冷凍コペポーダなどの浮遊する冷凍エサへの反応もいいです。
しかし実は、ふつうに塊状のエサもハサミや前足で抱えて食べることが論文(Kropp、1981)でも指摘されています。
また同じ論文では、沈殿したデトリタスをかき集めて食べたり、地面をたたいて巻き上がらせたデトリタスを食べることにも言及されていて、必ずしもろ過食だけに頼っているわけではないようです。
ジッサイ我が家でもサンゴ用の粒状フード「LPSコーラルペレット」や、「ザリガニ・ヤドカリ・カニの餌」などの粒状の人工餌をピンセットで直接与えたら、抱え込んで食べていました。
またハタゴに誤って食べられてしまったであろう巻貝の残骸にも手を出して食べていました。この何でも食べる感じはカニらしいですね。カニじゃないけど。
なので、普通に魚のエサが落ちてくるような環境ならそれを食べますし、大きめの粒状のエサを直接与えてしまうのもアリです。
ただ、水槽内に漂っている有機物だけでは確実にエサが足りないので何らかのエサは与えることをおすすめします。
混泳について
他種混泳
多くのベラの仲間、クダゴンベなどのゴンべの仲間、フグの仲間、カワハギの仲間は注意が必要です。
彼らは甲殻類が大好物で、アカホシカニダマシを襲ってしまう可能性があるため混泳は避けたほうがよいでしょう。
ただ、さすがにイソギンチャクに入っているアカホシカニダマシにまで手を出すことはあまりないと考えられます。
クマノミとの混泳はできる?
何の問題もなくできます。
自然界でもトウアカクマノミと一緒のイソギンチャクに入っているのを見たことがありますし、ジッサイ我が家の海水水槽でもカクレクマノミ2匹と混泳しています。
同種混泳
問題ありませんが、ペアまでにするのが無難です。
ペアで販売されていることもちょくちょくあるので、ペア導入はおすすめですが、それ以上は喧嘩する可能性もあるのであまりおすすめではありません。
また、その他のイソギンチャクと共生するエビ(アカホシカクレエビなど)とは混泳可能だと思われます。
ジッサイに自然界でも同じイソギンチャクに住んでいる様子を見ました。
さらに、ほかのふつうのエビ類(ホワイトソックスとか)はそもそもイソギンチャクに近づかないので混泳可能です。
サンゴとの混泳
可能です。
特にサンゴに悪さはしません。
環境変化・水質悪化に強い?
かなり丈夫です。
しかし甲殻類なので、急激な水質や比重、水温の変化には弱いです。
導入時の水合わせや普段の水換えには、ある程度は気を使う必要があります。
ろ過について
ふつうの海水魚が飼育できるくらいの水質が用意できれば全く問題ありません。
ただ、ソフトコーラルフードのような粉末状フードや冷凍ブライン、コペなどの浮遊するエサは非常に水を汚しやすいため、ちゃんとしたフィルターを用意するほうがベターですね。
▼水槽のろ過を担うフィルターについてはこちらで詳しく解説しています。
水温について
適切な水温は25℃です!
この値をキープできるように、ヒーターやクーラーで管理しましょう。1日での変化量が大きかったりすると弱ってしまう可能性もあるので、なるべく変化させないようにするのが基本です。
▼水槽用のヒーター・クーラーについてはこちらで詳しく解説しています
水換え
水換えは怠らないようにしましょう。
アカホシカニダマシなどの甲殻類は、微量元素(特にヨウ素)の欠乏に弱いです。定期的に水換えをすることでこれを補給できます。
▼水換えの適切な頻度について
特筆すべき飼育の注意点
急激な水質変化には弱い
他の甲殻類と同様に急激な水質変化には弱いです。
特に水槽導入時の水温合わせ・水合わせは慎重に行いましょう。
微量元素(ヨウ素)の欠乏に弱い
甲殻類が健全に脱皮を行うためにはヨウ素が重要な役割を果たしています。
我が家では以前、ヨウ素不足による甲殻類の脱皮不全で多くの生体を失ってしまったことがあります。
▼ヤドカリとエビをヨウ素不足で亡くしてしまった話
ヨウ素は重要な成分ながら水槽内からはすぐに失われてしまいます。維持するためには定期的な水換えが不可欠なのですが、元の含有量が少ないヨウ素はそれだけでは不十分だと感じます。
そのため、添加剤による定期的な添加をおすすめします。
おすすめはヨウ素を含む水槽に必要な微量元素を重点的に補給できる「パープルアップ」です。
我が家ではこれを添加し始めてからはヤドカリの脱皮不全による死亡は起きていません。
▼パープルアップのレビュー
ちなみに失われた片方のハサミは、ちゃんとヨウ素があって栄養状態も良ければ脱皮を何回かすればしっかり生えてきます。
アカホシカニダマシはエサをとるためにハサミはあまり使いませんし、普通に飼育する分にはこれでも問題ないですが、しっかり治してカッコよくなってほしいですね!
▼テッポウエビのハサミが生えてきた話
まとめ
*初心者さんでも飼育しやすい
*30cmキューブ水槽でも飼育可能
*水温は25度が安定
*エサは粉末状フードを与えるのも、粒状フードを与えるのも良い
*イソギンチャクはなくてもいい
*他種ではエビを好んで捕食する魚は不可。同種混泳はペアまでが無難
*クマノミやイソギンチャクと共生するエビとの混泳は可能
*急激な水質変化、ヨウ素欠乏には弱い
アカホシカニダマシは「カニだけどカニじゃない」「プランクトン食性」「イソギンチャクと共生」といった特徴的な生態が興味深く、見た目もかわいいのがいいですね!
特に混泳相手に困りがちな「クマノミとイソギンチャク」を飼育している水槽でも導入可能なので、にぎやかし要因としても活躍してくれます。
何ならイソギンチャク無しでも飼育できるので、気になった方は飼育してみてはいかがでしょうか?
▼アカホシカニダマシが気になった方は、こちらから購入できます。
※本記事を執筆するにあたり使用した参考文献
Roy K. Kropp「Additional Porcelain Crab Feeding Methods(Decapoda, Porcellanidae)」Crustaceana, Vol. 40, No.3(May, 1981), 307-310