本記事で分かること
・硝酸塩とは
・硝酸塩を減らす方法とその注意点
・硝酸塩を減らす際におすすめな商品
そもそも硝酸塩とは?
まず硝酸塩は、お魚の排泄物がバクテリアの働きによって、有害なアンモニア→やや有害な亜硝酸→ほぼ無害な硝酸塩と酸化されていく過程によってできます。
しかしこの硝酸塩も溜まりすぎると有害となるので、水替えをして取り除かなけれならないのです。
ここまではこの記事をご覧になっている方ならご存知かと思います。
なんで硝酸塩は減らないのか?
この硝酸塩が多すぎたり、硝酸塩が増えるスピードがあまりにも早いと、いくら水替えしても排出しきれないことがあります。
例えばエサをやりすぎている場合や水槽に対して魚が多い場合です。
私の水槽がまさにそうでした。
私は当時、60cm規格水槽で11匹の魚を飼っていました。
これは海水水槽としては多めの数だと思いますし、そのうえ下層のちょっと臆病なハタタテハゼにエサが届くように多めに与えていました。
それが影響したのか私の水槽では硝酸塩がでるスピードが早すぎて、いくら水替えをしても硝酸塩が減りませんでした…。
↑当時の測定結果。レッドシーの試薬で測定不能です…
硝酸塩を減らす方法
水換え
硝酸塩を下げる方法としては、まずはとにかく水換えです。単純な話で、半分水換えをすれば硝酸塩の値は半分になるはずです。
ですが…
そうなのです。
そもそもの硝酸塩の値が高すぎたり、または硝酸塩の発生スピードが早すぎたり、また割と盲点なのですが水道水に硝酸塩が含まれていたり、水換えでは対応しきれない場合があります。
▼実際の私が利用していた水道水
↑少しですが硝酸塩が出ています。
水換えしても下がらないときは、とにかく換えしまくるということが考えられます。
例えば私の水槽では1週間に何度も水換えをすれば対応できるかもしれませんが、それをずっと続けなければいけません。しかしそれは現実的ではないですよね。
そこで、水換えだけで対応は対応できない場合にはどういった方法があるかお話しします。
▼水槽における適切な水換えについてはこちら
リフジウムをつくる
硝酸塩を減らす方法としてリフジウムがあります。
リフジウムは海藻が成長する時に硝酸塩などの栄養塩を利用することを生かして、海藻を飼育することで硝酸塩を減らす方法です。
例えばオーバーフロー水槽であれば、サンプに「ウミブドウ」や「ホソジュズモ」などの海藻を入れて24時間ライトを当て続ければ、ウミブドウがずっと成長し続けるため硝酸塩の減少に貢献できます。
ライトを24時間当て続けることで海藻の寿命の進行をストップさせることができるため永遠に飼育できるようです。
私は現在オーバーフロー水槽を利用しており、実際にサンプで海ブドウに光を当て続けリフジウムとして稼働させています。
このようにオーバーフロー水槽であれば、サンプの広いスペースで海藻を育て続けられるため有効な手段だと思います。
増えすぎたウミブドウを、ヒフキアイゴやゴマハギなどの草食性のお魚のおやつにできるのもいい点ですね。
↑わかりづらいですが、ウミブドウをフロートボックスに入れて育成中です。
なお、この方法を利用する場合これらの海藻は強健なため、光の強さは弱くても全くかまいません。私は3000円のLEDを利用しています。
▼オーバーフロー水槽のサンプで簡単にリフジウムを始める方法
しかしオーバーフローではなく、外部フィルターで海水魚飼育をしている場合(当時の私がそうでした)、海藻のためのスペースを用意することができませんでした。
スドーのサテライトを用いればできないこともないですが、リフジウムの効果を最大限に発揮するには水槽と同じくらいのサイズで海藻を育てる必要があるようで、あそこまで硝酸塩が増えた私の水槽では効果は見込めないと思ったので断念しました…。
そもそもリフジウムは増えた硝酸塩を「減らす」のではなく、「増やさないようにする」使い方が適しているようです。
嫌気環境をつくる
これは硝酸塩を利用して生きるバクテリアに助けてもらう方法で、このあと話す方法とも繋がります。
自然界には脱窒菌という硝酸塩を利用して生きるバクテリアがいるのですが、このバクテリアは嫌気環境、つまり酸素がない環境で優先的に増えることができます。
そのため、パウダー状の砂を厚く敷く(5cm以上といわれています)ことで砂の下層に水が動かない環境をつくって酸素を少なくすることで、脱窒菌を増やして硝酸塩を減らしてもらう作戦です。
この方法は一見よいように思えますがデメリットもあります。
嫌気環境では他にも増えるバクテリアがいるのですが、そのバクテリアは魚たちにとって非常に有害な硫化水素をつくってしまうのです。底砂をいじらないようにすれば大丈夫のようですが、万が一硫化水素を水槽に放出してしまうと一気に水槽崩壊です。
それに、既に立ち上げていて硝酸塩に困っている水槽に嫌気環境をつくれるような底砂を追加するのも現実的ではありません。
▼安全に嫌気環境をつくることのできるろ材の使用もおすすめ!
炭素源(硝酸塩除去剤)を添加する
この方法は上の脱窒菌に硝酸塩を減らしてもらう方法を、リスクを減らして発展させたものです。
脱窒菌は増える時に炭素を利用します。そこでその炭素を水槽に入れてあげ、脱窒菌を意図的に増やすことで硝酸塩を減らすのです。
これをすることで、脱窒菌にがんばってもらい硝酸塩を低い値で保つことができます。
やり方は簡単で、水槽に適切な量の炭素源を添加するだけです。
炭素源は、硝酸塩除去剤として販売されています。
そのような商品の代表が、レッドシーさんが売り出しているNO3:PO4-Xがあります。
これは炭素源として有名なもので、減らしたい硝酸塩の水準や水槽の水量に合わせて規定量も決まっているため過剰添加の心配も少なく、とてもやりやすいです。
私も利用していました。初めて炭素源を添加する場合はこれがおすすめです。
炭素源添加の注意点としては、
・増えたバクテリアを処理するためのプロテインスキマーが必須
・過剰添加してしまうとバクテリアが増えすぎて酸欠が起こり、水槽が白濁りしてしまう
・脱窒菌が水槽内にいないと効果が表れない
・添加を忘れたり途中でやめたりしてしまうと効果が落ちる
・硝酸塩が高すぎると効果が表れにくいため、まず水替えで硝酸塩を下げてから行う必要がある
などがあります。
▼なお、炭素源添加についてはこちらの記事で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
炭素源添加は魅力的な方法ではありますが、一歩間違えると水槽崩壊の危険性もあるので、行う際は十分に気をつけなければなりません。
また、この炭素源としてみりんを利用するという荒業も存在します(実は私は、みりん添加で硝酸塩を減らすことに成功しています)。
気をつけるところは基本的に普通の炭素源添加と変わりませんが、技術的にしっかりと熟成されている方法ではないので、さらに気をつけるべき点がいくつかあります。
▼みりん添加で硝酸塩を減らす方法については、こちらの記事もご覧ください。
嫌気性(硝酸塩還元)バクテリアを添加する
硝酸塩が高すぎる場合には調節が必要ですが、最も手軽でおすすめな方法です。
市販のバクテリア剤の中には、硝酸塩を還元してくれる嫌気性バクテリアが含まれているものも多くあります。それらを水槽に直接添加してしまえば、硝酸塩の減少が見込めるというわけです。
嫌気性バクテリアが含まれているバクテリア剤は、バイコムの「スーパーバイコム21PD海水用」や「マメバクテリア」等がありますが、中でも最もおすすめなのは「土壌バクテリア」です。
土壌バクテリアには海水水槽の水質を安定させるために有効なバクテリア群が豊富に含まれています。
水槽の大きさにもよりますが、我が家ではこれをキャップ半分から1杯程度を週に2、3回添加しています。
レビューを見ると「コケが減った」「水が輝いて見える」などの好意的なものがあります。水が輝くかどうかはわかりませんが、これを使っていて私が感じるのは明らかにコケが減るということです。
また水槽の硝酸塩も測定する限り低く抑えられています。
嫌気性バクテリアに限らず、水質の安定を求める方には「土壌バクテリア」はこれ以上ないほどおすすめです。
▼土壌バクテリア。楽天で販売しているのはアクアギフトさんのみのようです
「硝酸塩を手軽に減らしたいけど、炭素源の添加は面倒くさい」というときには嫌気性バクテリアの添加は非常におすすめできる方法です。
ただ「炭素源の添加」と「嫌気性バクテリアの添加」を同時に行ったときに、爆発的なバクテリアの増殖により水槽全体が白濁りと酸欠の危機に陥る可能性もあります。
同時に行うこと自体は可能ですが、くれぐれも白濁りしないように注意しましょう。
当然、添加のしすぎにも注意しましょう。
この方法を利用する際は、水替えなどで水槽内の硝酸塩を事前にある程度下げておいてから始めることをおすすめします。
番外編
最後に、嫌気性バクテリアの働きを後押しするような商品を紹介します。
それは
このシーケムマトリックスです。
これはろ材なのですが、高密度で多孔質になっており水槽に投入すると内部に嫌気環境ができるとされています。
実際に手に取ってみると、小石状で非常に軽く、多孔質ということがわかります。
これを網に入れ、外部フィルターのいちばん最後に水が通る場所に入れました(他のバクテリアが利用してしまって、酸素が少ない水が通るから)。
これをフィルターに入れて、炭素源の添加、水換えと合わせるとすぐに硝酸塩が下がったため、安全そして簡単に嫌気環境を作りたい方にはおすすめだと思います。
まとめ
*硝酸塩が増えたらまずはとにかく水替え
*リフジウムも状況次第でおすすめ
*嫌気環境をつくるのは硫化水素の発生リスクがある
*炭素源添加は注意点に気をつければ比較的簡単
*みりん添加は安易に使うのはおすすめしない。やる際は十分に気をつける
*嫌気性バクテリアの添加は手軽に効果が見込める
*炭素源添加は嫌気性バクテリアが繁殖できるろ材とのセット利用が効率が良い
いかがだったでしょうか。いずれの方法も一長一短ですが、自分の水槽の大きさや飼育している魚に合わせて適切な方法を選択することが最も重要です。また、複数の方法を組み合わせられれば安定性は上がります。
そして、話の腰を折るのですが、最も重要なことは魚の数を抑制してそもそも硝酸塩が出ないようにすることだと思います。
よく言われる10Lに対して1匹を守っていれば硝酸塩に困ることはあまりないと思います。
と、私のような初心者の方は思ってしまうものですよね。自分がそうなのでよくわかります。
もう入れてしまったなら、魚を減らし硝酸塩を抑えるのは不可能です。よって何らかの対策を立てるしかありません。
中でも炭素源添加は魅力的な方法ですが、一歩間違えると水槽崩壊の危険性もある方法です。しかしきちんと用法用量を守って行えば、あなたの水槽の硝酸塩対策にかならずや役立ってくれるでしょう。
嫌気性バクテリアの添加もお手軽なのでおすすめです。
この記事がどなたかの役に立てば幸いです。
はじめまして!
70cm水槽に魚を入れ過ぎて(16匹)、硝酸塩を測ってみると測定不能、、、。
サンゴとライブロックと魚を45cm水槽に移動させてから深層海洋水、添加剤、バクテリアを入れて水換えし、魚を4匹にして、ライブロックとサンゴを戻しました。
試験紙で測定してみるとまだ硝酸塩が50ppmほどあります
ライブロックと砂に硝酸塩がこびりついてるのかと思っております。
幸い近くにアクアギフトさんがあるのでベッピン珊瑚の添加剤を使ってみます!
勉強になりました!
ありがとうございます♂️
コメントありがとうございます!そうおっしゃっていただけて嬉しいです。
硝酸塩はいつまでたっても付きまとう問題ですよね。
水換えやバクテリアでも下がらない場合、ひがさんのおっしゃる通りライブロックや砂、ろ材や砂中のデトリタスが硝酸塩の温床となってしまい、慢性的に硝酸塩の下がらない状態になっている可能性が考えられると思います。
このような場合、ろ材やライブロックや砂を交換するのも手のひとつではあると思います。ただこれらのものを交換すると水槽のろ過やバクテリアに大きな影響がありますので、交換する場合は少しずつ交換するのがいいかもしれません。それぞれ一時的に取り出して飼育水で洗い、デトリタスを落とすのもいいかもしれません。この場合も慎重にやることをおすすめします。
オーバーフロー水槽であればろ材や濾過槽の掃除(飼育水で)、外部フィルターでの管理であればフィルターを開けて、デトリタスを洗い流す(こちらも飼育水で)のも効果がありそうです。
そのほかおすすめなのは、ナチュラルさんが販売している「ビオアクアマリン」でバクテリア層を強化したり、シュリンプさんの「ワラワラ」で生物層を強化したりするのもよさそうですね。
べっぴん珊瑚の土壌バクテリアは普段の水質管理にも役立つと思いますのでぜひ!
ひがさんの水槽の硝酸塩が減ることを祈ります!