今回は我が家で謎のペアができたので紹介したいと思います。
本記事で分かること
・何もわかりません
ギンガハゼとネジリンボウがペア化した…
我が家では共生ハゼを4種類(2022年5月7日現在)飼育しています。
60cmスリム水槽をセパレーターで5つに分けて、左の区画から「ニチリンダテハゼ」「ヒレナガネジリンボウ」「ギンガハゼ」「ヤシャハゼ」を飼育しており、一番右の区画には「イエローヘッドジョーフィッシュ」を入れるつもりです。
しかしある日気づくと、ネジリンボウエリアにネジリンボウがいません。
よく見るとなんとギンガハゼエリアにネジリンボウが侵入しているではありませんか!
どうやら飛び出してセパレーターの上を超えていったみたいです。フタはしっかりしていたので水槽外に飛び出なかったのは幸いでした。
しかし私は焦りました。ふつうギンガハゼはかなり排他的で、他の共生ハゼや巣に近づく生物に対しても攻撃して追い払ってしまうからです。
ジッサイ以前、ペア化に期待してギンガハゼをニチリンダテハゼのエリアに入れたときは、ニチリンをいじめて巣を奪ってしまったので…。
しかし意外や意外、なんとこの2匹は仲良くしています。
え、なんで…?
同じ塩ビ管に入ってる(笑)。かわいいですね。もはや完全にペア化しています。
ヤシャとネジリンボウ、ヤシャとヤノダテ、ネジリンボウとヤノダテなどの組み合わせは聞きますが、これは初めての経験です。
さすがに自然界ではない組み合わせなんじゃないかな…。もはや意味不明です。
これはしながわ水族館で撮影したヒレナガネジリンボウとヤノダテハゼのペア。
彼らは属こそネジリンボウ属とダテハゼ属で違うものの、自然界や水槽内でもペア化することはあるみたいです。
ヤシャとネジリンボウは同じネジリンボウ属なので、ペアになるのはそこまで意外でもない気がしますね。
しかし今回はネジリンボウ属のヒレナガネジリンボウと、イトヒキハゼ属のギンガハゼのペア。しかもギンガハゼが異種とペアを組むというのは聞いたことがないので、ますます謎が深まります。
一応どっかのYouTubeで、ヒレナガネジリンボウとニチリンダテハゼがペア化しているのは見たことがあります。
それも自然界ではない組み合わせかと思うのですが、ネジリンボウ属とダテハゼ属の組み合わせなので一応既知の属同士の組み合わせではありますね。
しかしあまりにも謎なので、ちょっと自分でも仮説的なものを考えてみます。
というのも、自然界でペアになる「ヤシャとネジリン」「ヤシャとヤノダテ」「ネジリンとヤノダテ」に共通するのは、どれも小型の共生ハゼであり、「コトブキテッポウエビ」と主に共生するという点です。
またこれらの種は生息環境が似通っており、自然界で出会う確率も高いためにペアになる確率が高いのかもしれません。
この、「体の大きさ」と「共生するエビ」という点が重要ではないかと思っています。
我が家のギンガハゼは、自分よりも小さいニチリンダテハゼを執拗に追い払いました。
しかし今回一緒になったネジリンボウは、ギンガハゼと同じかそれよりやや大きいくらい。
したがって、異種の共生ハゼは大きさが同じくらいの場合にペアになりやすいのかもしれません。
またもう一つ大事なのが、エビとの相性かと思います。
ギンガハゼは自然界では主に「ホリモンツキテッポウエビ」と共生しているようですが、「ニシキテッポウエビ」とも共生することがあり、我が家では「ニシキテッポウエビ」を共生させていました。
またヒレナガネジリンボウも自然界において「コトブキテッポウエビ」だけでなく「ニシキテッポウエビ」と共生します。
今回はこの体の大きさの部分と、共生するエビの種の一致、そしてたまたまですが、ギンガとネジリンの性別がかみ合った結果生じた謎ペアの誕生だったのかもしれません。
異種間ペアの日常 pic.twitter.com/V9GLISZO9g
— りるたき@海大好き理系大学生 (@rirutaki_sakana) May 6, 2022
まあ難しい理屈は抜きにしてもとにかくかわいいので毎日癒されています(笑)。
でも魚にありがちなのは、昨日までは平気だったのに今日には喧嘩するという謎行動。
サイズとか縄張りとかの関係で急にある日から喧嘩が起こり始めるということもあるあるなので、そこには注意しないといけませんね。
あと、ネジリンボウがいなくなったエリアには現在コトブキテッポウエビのみしかいない状態になっているので、そこにも「ドラキュラシュリンプゴビー」か、「ヤノダテハゼ」(どっちもコトブキテッポウと共生する)を入れようと思います。
ハゼのうんこがテッポウエビの重要な栄養源になっているという論文も最近見た(幸田、2017)のでなるべく早くハゼを入れてあげるつもりです(笑)。
まとめ
*共生ハゼは別種同士でも「同じくらいのサイズ」「共生するエビが同じ」「性別がオスメス」という条件を満たせばペア化するのかもしれない
今回はなぜかペア化したギンガハゼとヒレナガネジリンボウについてお話ししました。
まあー、こんなことはそうそうないと思いますが、なかなかに興味深い事態ですね。
彼らがこれからどうなるのか見ていきつつ、これからも「共生ハゼ」の飼育を楽しみたいと思います。
※本記事を執筆するにあたり使用した参考文献
林公義・白鳥岳明(2004)「ハゼガイドブック」阪急コミュニケーションズ
野村恵一(2003)「日本に産するハゼ類と共生するテッポウエビの分類学的検討」日本生物地理学会会報第58巻、49-70
幸田正典(2017)「A novel aspect of goby–shrimp symbiosis: gobies provide droppings in their burrows as vital food for their partner shrimps」Marine Biology、164、1