今回は共生ハゼの一種であるニチリンダテハゼの飼育法と注意点をご紹介します。
本記事で分かること
・ニチリンダテハゼの特徴
・飼育に必要な環境
・飼育法
・飼育の注意点
ニチリンダテハゼの飼育まとめ
ニチリンダテハゼの飼育について簡単にまとめてみました。
水槽の大きさ | 20cm水槽~ |
---|---|
環境変化に強いかどうか | 強い |
水温 | 25℃ |
食性/おすすめエサ | 肉食性(微小な甲殻類やプランクトンなど)/メガバイトレッド |
性格 | おくびょう |
魚との混泳の相性 | 他種:共生ハゼ類には注意が必要 同種:ペアにとどめるのが無難 |
サンゴとの相性 | 対策すれば大丈夫 |
特記事項 | 主にニシキテッポウエビと共生する |
総合飼育難易度 | ★★☆☆☆ |
これらについてこの先でお話ししていきます。
ニチリンダテハゼの特徴
ニチリンダテハゼの見た目
大きさは最大で8センチほどになります。
身体は明るい白色にオレンジや黄色のシマシマが入っていて、背びれにひとつの黒い球のような模様があり、おそらくそれが「ニチリン」の名の元にもなっていると考えられます。
3~5センチ程度のかわいらしい個体がよく販売されています。5~7センチの中型の個体もたまに目にします。
テッポウエビとの共生
ニチリンダテハゼは共生ハゼの一種で、テッポウエビの仲間と共生することが知られています。
というのも、エビは視力が低いので、自分が巣作りに集中できるように目のいいハゼに見張りをしてもらうのです。
その分ハゼはエビがつくった巣に住まわせてもらうことができます。
その他にもハゼがエビのエサを持ってきたり、ハゼのウンチをエビがエサにしたり、エビがハゼをクリーニングしたりと両者の関係はかなり深いです。
エビがいなくても飼育自体はできますが、臆病がちになったり落ち着かなかったりするので飼育の際はテッポウエビと一緒に飼育してあげましょう。
共生ハゼは種類ごとに共生するエビの種類がだいたい決まっており、ニチリンダテハゼの場合は「ニシキテッポウエビ」か「コシジロテッポウエビ」がいいみたいです。
自然下では主にコシジロテッポウエビと共生している(野村、2003)ようですが、水槽内ではニシキテッポウエビとも問題なく共生し、こちらの方が手に入りやすく値段も安価、見た目も美しいのでおすすめです。
また、テッポウエビは巣作りにサンゴの破片や砂を利用し、ライブロックを基礎としてその下に巣をつくることが多いです。
後にも載せますが、テッポウエビに巣をつくらせるためにサンゴ砂は大小入り混じったものを4、5cmほど敷くとよいでしょう。
▼ニシキテッポウエビの飼育について
ニチリンダテハゼの性格
ニチリンダテハゼの性格はハゼらしい性格をしています。
エビと共生していない状態だと臆病で落ち着きがありません。しかしエビと共生している状態なら常に巣から出てきて周囲を見渡しています。
基本的に温和で他の魚にちょっかいを出すことはありませんが、同じ共生ハゼの仲間にだけは気が強くなることが多いみたいなので注意が必要です。
ニチリンダテハゼを購入する
ニチリンダテハゼは海水魚を販売しているショップや通販などで購入できます。
入荷は多く、海水魚を扱っているショップなら比較的簡単に入手できます。値段は共生ハゼの中では高価な方で、1匹2000~4000円くらいの場合が多いです。
基本的には丈夫な魚なんですが、輸送には弱いイメージがあります。
我が家ではニチリンダテハゼを通販で3回購入したことがあるのですが、そのうち2回は弱っていた状態で到着してしまいました..。
購入時期が冬だったということがあると思いますが、2回のうち1回は助けられなかったので悔しい思いがあります。
購入の際は時期を考えるか、実店舗での購入がおすすめです。
ニチリンダテハゼの飼育について
必要な水槽の大きさ
大きさは最大で8cmほどになりますが、販売サイズは5cm弱の個体が多いです。
水槽内なら大きくは成長しませんし、底生の魚なので水槽は大きくなくても問題ありません。20cm水槽で十分に飼育できます。
底砂について
上でも書きましたが、ニチリンダテハゼと共生するテッポウエビは砂を掘って巣をつくるので、飼育には底砂(サンゴ砂)が必要になります。
パウダータイプのサンゴ砂だとどんどん崩れてきてしまって巣をつくれないので、サンゴ砂は指先くらいの大きな粒から数ミリの小さな粒までをまぜておくのがいいでしょう。
サンゴ砂の厚さについては、少なくても飼育自体はできますが、大体4、5cm敷いておくのが理想でしょう。
ちなみに自然界ではテッポウエビは地中に水平方向の広さは1m、深さは70cmにもなる巣を掘る(※)みたいです。すごいですね。
※「サンゴとサンゴ礁のはなし 南の海の不思議な生態系」本川達雄 より
我が家ではご覧の通り5cm程度の底砂を敷いています。底砂はcharmさんの「ばくとサンド ラージ」と「アラゴナイトサンド」を混ぜて使用しました。
▼アラゴナイトサンドについてはコチラ
▼サンゴ砂の量と厚さについてはコチラ
エサ
ニチリンダテハゼはすぐに人工餌を食べることが多く餌付けの心配はあまりありません。
もし餌付かない場合は冷凍ブラインシュリンプなどをスポイトで与えれば食べてくれることが多いでしょう。
エサの量については、かわいくてたくさんあげてしまう気持ちは痛いほどよくわかります が、無秩序なエサやりは水質の悪化を招きよくありません。魚たちが1分ほどで食べきれる量を、2、3回にわけて、1日に2回ほど与えましょう。
おすすめは栄養価の高い沈下性の人工餌である、メガバイトレッドです。コスパが最強なテトラマリン ミニグラニュールもおすすめです。
我が家ではテトラマリン ミニグラニュールを与えていますが、巣の前に落としておくと後で勝手に食べてくれるのでエサやりが楽でいいです(笑)。
自然界でもこんな感じで巣の周りに落ちているエサや、寄ってくるプランクトン、ゴカイなどをつまみ食いしながら生活しているみたいです。
ニチリンダテハゼの混泳について
他種混泳について
ニチリンダテハゼの性格は臆病な方です。ほかの魚に攻撃を仕掛けるようなことはあまりないですが、気が強い魚がいるとやられてしまったり引っ込んでしまったりすることがあります。
しかしエビと共生している状態なら、監視するためにきちんと出てくることが多いのであまり気にしなくても大丈夫かもしれません。
またほかのハゼの仲間には注意が必要です。ニチリンダテハゼは共生ハゼの中でも気が強い方とされ、他の共生ハゼを攻撃してしまうこともあるようです。
共生ハゼを同じ水槽で複数種飼育したい場合は、大きい水槽で飼育するか仕切りなどで区画を分けてもいいかもしれませんね。
人気のカクレクマノミや、ハギ類、ハゼ類、ハナダイなどの多くの魚とは問題なく組み合わせられます。
同種混泳について
ペアより多く(3匹以上)での飼育は喧嘩してしまう可能性がありおすすめしません。
2匹導入したときに運悪く同じ性別だと喧嘩してしまうことも考えられるので、水槽が相当大きくない限りは単独飼育をおすすめします。
サンゴとの混泳について
基本的に可能です。
ただテッポウエビが底砂に巣をつくる関係で、底砂付近のレイアウトはかなり変わります。ライブロックの下も掘るのでライブロックが沈んでしまうこともしばしば。
サンゴなどを底砂にレイアウトしている場合や、崩されたくないレイアウトがある場合には注意が必要でしょう。
ニチリンダテハゼは環境変化に強い?
ハゼ類の例にもれず丈夫です。
水質の悪化や温度変化などの悪条件・環境変化にも強めです。
ただ先述の通り、我が家では通販で購入したニチリンダテハゼが2回中2回弱って到着したので、輸送には弱い面があるのかもしれません。
ろ過について
丈夫な魚ですので、他の魚が飼育できるくらいの水質が用意できれば問題ありません。
▼水槽のろ過を担うフィルターについてはこちらで詳しく解説しています。
水温について
適切な水温は25℃です!
この値をキープできるように、ヒーターやクーラーで管理しましょう。1日での変化量が大きかったりすると病気になってしまう可能性もあるので、なるべく変化させないようにするのが基本です。
▼水槽用のヒーター・クーラーについてはこちらで詳しく解説しています
水換え
水換えは怠らないようにしましょう。丈夫なニチリンダテハゼとはいえ、汚れきった水では長生きできません。
目安は週に1回水槽の水量の10%程度です。2週に1回20%でももちろんかまいません。あまり大量に水換えしてしまうと環境変化が大きくなってしまうので、なるべくこまめに水換えしましょう。
硝酸塩について
硝酸塩とは水の汚れそのものです。ろ過の過程で残るのですが、これ自体は分解されないので水槽にたまっていきます。これを排出するために水換えが必要なのです。
できればでよいので、硝酸塩については試験紙や試薬を購入して適宜測定を行うことが望ましいです。
基本的には、50ppm(mg/L)という値を超えてしまうと危険なので、それ以下の値を保てるように水換えを行いましょう。
海水魚の飼育をその後も見据えているなら、初めは安価なものでもよいので試験紙などを購入して測定することをおすすめします。
おすすめはこちら。試験紙タイプで結果は多少アバウトですが安価で、半分に切って使えば50回分あるのでコスパ最強です。
こちらは試薬タイプのものです。より正確に測れますよ。
▼硝酸塩について、またそれを減らす方法についてはこちらでも詳しく解説しています
飼育の注意点
飛び出し注意!
エビと共生している状態なら巣に逃げ込むのであまり心配いらないのですが、やはりハゼはハゼなので、びっくりすると飛び上がって水槽から出てしまう可能性があります。
気づくと干物になっていたという事態を防ぐためにも水槽のフタはしっかりとしておきましょう。
すでに底砂が汚くなってしまった水槽に導入するのは避けたほうがいい
共生ハゼの飼育では、テッポウエビが底砂を掘る関係で底砂の中に有害物質がたまっていた場合にそれをまき散らしてしまう可能性があります。
したがって、ニチリンダテハゼを導入するなら立ち上げてすぐの水槽か、リセットや半リセットで底砂を新しいものに交換したときなどがおすすめです。
まとめ
*初心者さんでも飼育しやすい
*20cmキューブ水槽で飼育できる
*水温は25度が安定
*他種混泳は他の共生ハゼ以外の種なら可能。同種混泳は大きな水槽でないなら避けたほうが良い
*テッポウエビと共生する(ニシキテッポウエビがおすすめ)
*エビの巣作りでレイアウトが崩れないように注意
*病気をばら撒いてしまうかも。きれいな底砂の水槽に導入するのがおすすめ
*飛び出しには注意。水槽にはしっかりフタをしよう
今回はニチリンダテハゼの飼育法と注意点をお話ししました。
ニチリンダテハゼのような共生ハゼがテッポウエビと協力する様子はなんだかけなげでかわいいですよね。
この子は見た目もきれいで飼育していてとっても楽しいので、気になった方はぜひ飼育してみてください!
※本記事を執筆するにあたり使用した参考文献
林公義・白鳥岳明(2004)「ハゼガイドブック」CCCメディアハウス
本川達雄(2008)「サンゴとサンゴ礁のはなし 南の海の不思議な生態系」中公新書
瀬能宏・鈴木寿之・渋川浩一・矢野維幾(2021)「新版 日本のハゼ」平凡社
野村恵一(2003)「日本に産するハゼ類と共生するテッポウエビの分類学的検討」日本生物地理学会会報第58巻、49-70
幸田正典(2017)「A novel aspect of goby–shrimp symbiosis: gobies provide droppings in their burrows as vital food for their partner shrimps」Marine Biology、164、1
「https://www.croissant-island.com/sakana/yasya.html」