今回は共生ハゼの一種である「ハタタテシノビハゼ」の飼育法と注意点をご紹介します。
本記事で分かること
・ハタタテシノビハゼの特徴
・飼育に必要な環境
・飼育法
・飼育の注意点
ハタタテシノビハゼの飼育まとめ
ハタタテシノビハゼの飼育について簡単にまとめてみました。
水槽の大きさ | 20cm水槽~ |
---|---|
環境変化に強いかどうか | 強い |
水温 | 25℃ |
食性/おすすめエサ | 肉食性(プランクトン食)/メガバイトレッド |
性格 | おくびょう |
魚との混泳の相性 | 他種:共生ハゼ類・その他では気が強い種類には注意が必要 同種:ペアにとどめるのが無難 |
サンゴとの相性 | 対策すれば大丈夫 |
特記事項 | 主にランドールズピストルシュリンプ(コトブキテッポウエビ)と共生する |
総合飼育難易度 | ★★☆☆☆ |
これらについてこの先でお話ししていきます。
ハタタテシノビハゼの特徴
ハタタテシノビハゼの見た目
大きさは最大で6センチほどになります。
その名の通り、長く伸びた背びれが特徴的です。
オレンジと水色の小さな水玉模様が体にちりばめられており、控えめながら奥ゆかしい魅力を感じます。
ふああ〜 pic.twitter.com/Q2HoXLG3nJ
— りるたき (@rirutaki_sakana) October 22, 2022
テッポウエビとの共生
ハタタテシノビハゼは共生ハゼの一種で、テッポウエビの仲間と共生することが知られています。
▼共生ついて詳しくはコチラ
一応エビがいなくても飼育はできますが、臆病がちになったり落ち着かなかったりするので飼育の際はテッポウエビと一緒に飼育してあげましょう。
共生ハゼは種類ごとに共生するエビの種類がだいたい決まっており、ハタタテシノビハゼの場合は「ランドールズピストルシュリンプ(コトブキテッポウエビ)」が最適です。
自然界ではコシジロテッポウエビと共生していて(野村、2003)、コトブキテッポウエビと共生しているという情報は見たことがありませんが、水槽内では問題なくコトブキテッポウエビと共生します。
▼コトブキテッポウエビの飼育について
ハタタテシノビハゼを購入する
ハタタテシノビハゼは海水魚を販売しているショップや通販などで購入できます。
入荷はまちまち。ギンガハゼなどほどコンスタントに入荷はしませんが、探せば普通に手に入るくらいの頻度です。
値段は1匹1000~円くらいの場合が多いです。
アクアギフトさんにはよく入荷している印象。
ハタタテシノビハゼの飼育について
必要な水槽の大きさ
大きさは最大で6cmほどになりますが、販売サイズは3、4cmの個体が多いです。
泳ぎ回るタイプのお魚ではないので水槽は大きくなくても問題ありません。20cm水槽で十分に飼育できます。
底砂について
上でも書きましたが、ハタタテシノビハゼと共生するテッポウエビは砂を掘って巣をつくるので、飼育にはサンゴ砂が必要になります。
またハタタテシノビハゼは自然界では、下の写真のような礫や死サンゴ辺混じりの砂底に生息しています。
パウダータイプのサンゴ砂のみだとどんどん崩れてきてしまって巣をつくりずらいこともあるので、サンゴ砂はパウダーだけでなく指先くらいの大きな粒もまぜておくのがいいでしょう。
サンゴ砂の厚さについては、少なくても飼育自体はできますが、大体4、5cm敷いておくのが理想でしょう。
我が家ではご覧の通り5cm程度の底砂を敷いています。底砂はcharmさんの「ばくとサンド ラージ」と「アラゴナイトサンド」を混ぜて使用しました。
▼アラゴナイトサンドについてはコチラ
▼サンゴ砂の量と厚さについてはコチラ
あとは、水槽内に人工物が入ってしまってもいいという方は「塩ビ管」を使用することで巣をつくる場所を多少コントロールすることもできます。
エサ
すぐに人工餌を食べることが多く餌付けの心配はあまりありません。
もし餌付かない場合は冷凍ブラインシュリンプなどをスポイトで与えれば食べてくれることが多いでしょう。
おすすめは栄養価の高い沈下性の人工餌である、メガバイトレッドです。コスパが最強なテトラマリン ミニグラニュールもおすすめです。
我が家ではテトラマリン ミニグラニュールを与えています。
ただスズメダイなどと違って上まで泳いできてエサを食べることはないので、スポイトなどで顔の近くに直接エサを落としてやるとよく反応します。
混泳について
他種混泳について
ハタタテシノビハゼの性格は臆病な方です。ほかの魚に攻撃を仕掛けるようなことはないですが、気が強い魚がいるとやられてしまったり引っ込んでしまったりすることがあります。
しかしエビと共生している状態なら、少しだけ気が強くなるみたいですね。
またほかの共生ハゼの仲間には注意が必要です。ハタタテシノビハゼは共生ハゼの中でも温和な方で他の共生ハゼとの混泳はしやすい方なのですが、ギンガハゼやニチリンダテハゼなどの気が強い共生ハゼには注意が必要です。
共生ハゼを同じ水槽で複数種飼育したい場合は、大きい水槽で飼育するか仕切りなどで区画を分けてもいいかもしれませんね。
▼水槽用セパレーターについて
同種混泳について
ペアより多く(3匹以上)での飼育は喧嘩してしまう可能性がありおすすめしません。
自然界でも単独かペアで生きているお魚のため、同種同士の混泳は最高でも2匹にした方がいいでしょう。
サンゴとの混泳について
基本的に可能です。
ただテッポウエビが底砂に巣をつくる関係で、底砂付近のレイアウトはかなり変わります。ライブロックの下も掘るのでライブロックが沈んでしまうこともしばしば。
サンゴなどを底砂にレイアウトしている場合や、崩されたくないレイアウトがある場合には注意が必要でしょう。
ハタタテシノビハゼは環境変化に強い?
ハゼ類の例にもれず丈夫です。
水質の悪化や温度変化などの悪条件・環境変化にも強めです。
水温について
適切な水温は25℃です!
この値をキープできるように、ヒーターやクーラーで管理しましょう。1日での変化量が大きかったりすると病気になってしまう可能性もあるので、なるべく変化させないようにするのが基本です。
▼水槽用のヒーター・クーラーについてはこちらで詳しく解説しています
飼育の注意点
飛び出し注意!
エビと共生している状態なら巣に逃げ込むのであまり心配いらないのですが、やはりハゼはハゼなので、びっくりすると飛び上がって水槽から出てしまう可能性があります。
気づくと干物になっていたという事態を防ぐためにも水槽のフタはしっかりとしておきましょう。
すでに底砂が汚くなってしまった水槽に導入するのは避けたほうがいい
共生ハゼの飼育では、テッポウエビが底砂を掘る関係で底砂の中にデトリタスや有害物質がたまっていた場合にそれをまき散らしてしまう可能性があります。
したがって、ハタタテシノビハゼを導入するなら立ち上げてすぐの水槽か、リセットや半リセットで底砂を新しいものに交換したときなどがおすすめです。
まとめ
*初心者さんでも飼育しやすい
*20cmキューブ水槽で飼育できる
*水温は25度が安定
*他種混泳は他の共生ハゼ以外の種なら可能。同種混泳は大きな水槽でないなら避けたほうが良い
*テッポウエビと共生する(ランドールズピストルシュリンプがおすすめ)
*エビの巣作りでレイアウトが崩れないように注意
*病気をばら撒いてしまうかも。きれいな底砂の水槽に導入するのがおすすめ
*飛び出しには注意。水槽にはしっかりフタをしよう
今回はハタタテシノビハゼの飼育法と注意点をお話ししました。
ハタタテシノビハゼのような共生ハゼがテッポウエビと協力する様子はなんだか健気でかわいいですよね。
この子は地味なように見えて実は奥ゆかしい模様がかわいらしい子なので、気になった方はぜひ飼育してみてください!
※本記事を執筆するにあたり使用した参考文献
本川達雄(2008)「サンゴとサンゴ礁のはなし 南の海の不思議な生態系」中公新書
瀬能宏・鈴木寿之・渋川浩一・矢野維幾(2021)「新版 日本のハゼ」平凡社
野村恵一(2003)「日本に産するハゼ類と共生するテッポウエビの分類学的検討」日本生物地理学会会報第58巻、49-70
幸田正典(2017)「A novel aspect of goby–shrimp symbiosis: gobies provide droppings in their burrows as vital food for their partner shrimps」Marine Biology、164、1
「https://www.croissant-island.com/sakana/yasya.html」