というわけで今回は海水水槽の底砂に使うサンゴ砂の厚さはどのくらいにすればいいのかについてお話しします。
本記事で分かること
・サンゴ砂の厚さについて
・水槽別の目安の量について
・目的別おすすめの厚さ
▼サンゴ砂の役割や必要性について
サンゴ砂の厚さについて
厚く敷くと還元能力に期待できる
サンゴ砂の厚さが一番関係するのは、還元能力の有無です。
サンゴ砂を厚く敷くと、その底部では砂の隙間の水がほとんど動きません。
厚くというのは、パウダータイプなら5cm以上と言われています。それより大きい粒ならもっと(7~8cmとか)でしょうね。
このような環境では酸素が少ない環境になり、酸素が少ない環境を好む「嫌気性バクテリア」が活動します。
こいつらは硝酸塩や硫酸塩を還元(酸化の逆)することでエネルギーを得て生きており、その中でも硝酸塩を還元して生きる「脱窒菌」は水槽内の硝酸塩を還元して窒素に戻すことができます。
▼溜まってしまった硝酸塩を減らす方法
したがって、サンゴ砂を厚く敷くことで硝酸塩を減らしたり、溜まることを抑制する効果に期待することができるのです。
しかしこの方法にはデメリットもあります。
それは「硫化水素の発生リスクがある」ということです。
嫌気環境では脱窒菌のほかに「硫酸還元菌」というバクテリアが繁殖することがあります。
ここでの問題は、硫酸還元菌の活動により硫化水素が発生してしまう可能性があることです。
硫化水素は猛毒で、もし水槽内に放出されてしまうと生体全滅のリスクさえあります。
したがってサンゴ砂を厚くするのはハイリスクハイリターンといえますね。
ただ、ここは底砂をかき混ぜる生体の存在によって改善できる部分もあります。
生き物の飼育に厚さが必要なこともある
サンゴ砂はたくさんの生き物や魚の住処になります。
上に載せたジョーフィッシュはもちろん、テッポウエビとハゼの共生関係、有名なチンアナゴやニシキアナゴでは砂に巣をつくって暮らします。
ジョーフィッシュやテッポウエビの飼育では5cm程度はあったほうがいいと言われます。
我が家では数ミリの粒のアラゴナイトサンド4cmくらいでジョーフィッシュを飼育していました。
チンアナゴやニシキアナゴでは10cmはあったほうがいいと聞きますね。水族館などを見ていても結構厚い印象です。10cmは言い過ぎかもしれませんが4、5cmは最低でもあったほうがいいでしょう。
さらに、高いデトリタス処理能力を持ちながら水槽では嫌われがちなゴカイや、優秀な掃除屋さんのムシロガイ、ウミケムシを食べるらしい(?)オニヒメブンブクも砂の中で生活しています。
またベラの仲間の一部は、寝るときに底砂の中に潜って寝ます。
このようなベラの仲間の飼育でも5cmくらいはある方がいいでしょう。寝るとき砂に突っ込むように入っていくので、薄すぎると顔をけがしてしまうかもしれません。
さらにさらに、ミズタマハゼやオトメハゼなど、砂の中にある有機物や小さな生き物を食べている魚もいます。
▼ミズタマハゼの飼育について
また底砂掃除に大活躍するマガキガイも、底砂上のコケや有機物を食べるので、その能力を買われて水槽のお掃除屋さんとして大人気なんです。
ミズタマハゼやマガキガイの飼育では厚い必要はありませんが、底砂が全くないのはダメです。
こんな風に、飼育にサンゴ砂の厚さが必要な生体は割と多いです。
おすすめの厚さ【目的別】
ここからは目的別におすすめの厚さを紹介していきます。
硝酸塩が溜まらない環境にしたい【5cm以上】
先ほどもお話ししましたが、硝酸塩がたまらないような環境にするにはサンゴ砂を厚く敷く必要があります。
パウダータイプで5cm以上、そうでないなら7cm以上でしょうか。
硫化水素発生リスクを抑える方法
底砂を厚く敷く場合どうしても硫化水素の発生リスクは伴うのですが、それを抑える方法があります。
それは「マメカルシウムサンドの利用」です。
マメカルシウムサンドはマメデザインさんから販売されている海水魚飼育用の底砂で、カルシウムなどをよく溶出しpHやKHを安定させる能力に優れるようです。
そのポイントとして、3cm以上敷くと底部に嫌気層ができ、脱窒が期待できるみたいです。
推奨されている厚さは7cmですね。そしてどうやら硫化水素を発生させる硫酸還元菌は高いpHが嫌いらしく、マメカルシウムサンドの高いpHによって硫化水素の発生リスクを抑えているようです。
ただこの辺は言ったもん勝ちの部分があるので本当に効果が保証されているのかどうかはわかりませんが、マメカルシウムサンドが高品質な底砂なのは間違いありません。
底砂を厚く敷く必要があるときにはぜひ。
公式サイトはこちら
砂に潜るベラが飼いたい/ジョーフィッシュや共生ハゼ・テッポウエビを飼いたい【5cm前後】
砂に潜るベラの仲間(コガネキュウセンやライムラスなど)や、砂に巣をつくって暮らすジョーフィッシュ、共生ハゼとテッポウエビのコンビなどを飼育する場合には5cm程度の底砂が必要になります。
砂に潜るベラの仲間の場合は潜りやすくするためになるべく粒が小さなサンゴ砂のほうがいいと思います。
ジョーやテッポウエビと共生ハゼのように巣を作るタイプの飼育では、大きめの粒と小さめな粒が混ざり合ったような砂質だと巣がつくりやすいみたいです。
チンアナゴやニシキアナゴを飼いたい【~10cm】
チンアナゴやニシキアナゴは底砂に長い身体を埋めて生活しているので、理想としては10cm以下程度のかなり厚めの底砂が必要と言われています。
粒もなるべく小さなものがいいでしょう。
しかしこのような環境では硫化水素の発生リスクが非常に高くなってしまう上、厚い底砂は取り回しは悪いです。
また水族館や海水魚ショップなどでもそれよりも薄い底砂で飼育されている状況はありますので、5cm程度敷いておけば飼育において問題はないと思われます。
またどうしても底砂を厚く敷きたい場合は、先ほど紹介したマメカルシウムサンドを7cmほど敷くのが最も向いているでしょう。
特にこだわりはない!見た目をよくしたい!【2、3cm】
ここまで紹介したような生体を飼育するつもりはなく、硝酸塩などを含めて底砂の厚さに対してのこだわりがないなら、2、3cm程度のサンゴ砂を敷くことをおすすめします。
サンゴ砂を厚く敷くのは危険ですし、だからといって敷かないのも見た目や水質の安定性に欠けます。
2、3cm程度なら硫化水素の発生リスクもありませんし、デトリタスの掃除なども楽にできちゃいます。
特に目的がない場合はこの2、3cm程度が最も向いていると個人的には思います。
量の計算の仕方・目安について
あくまでも目安になりますが、必要な底砂の容量、つまりL(リットル)は簡単に計算できます。
水槽の底面積cm²÷1000
これが底砂1cmあたりに必要な容量(L)です。
例えば30cmキューブ水槽であれば、底面積は30cm×30cm=900cm²なので、それを1000で割ると0.9です。
これが30cmキューブ水槽の、底砂1cmあたりに必要な量(L)になります。
水槽の大きさ(横×縦) | サンゴ砂の厚さ1cmあたりに必要な量(L) |
---|---|
30cmキューブ(30×30) | 30×30÷1000=0.9 0.9L |
45cm規格(45×30) | 45×30÷1000=1.35 1.35L |
45cmキューブ(45×45) | 45×45÷1000=2.025 約2L |
60cm規格(60×30) | 60×30÷1000=1.8 1.8L |
60cmワイド(60×45) | 60×45÷1000=2.7 2.7L |
90cm規格(90×45) | 90×45÷1000=4.05 約4L |
ジッサイは水槽の内部の容量は見た目よりも小さいので、この目安の量で敷ける厚さは1cmよりも若干ながら厚いです。
なので大まかな目安にはなりますが、だいたいこんな感じと思っていただければダイジョウブです。
我が家での水槽60cmワイド水槽では、4.5kgの「アラガライブ」を利用して、1.5cmくらいの厚さでした。
ということは、4.5kgのサンゴ砂で3~4L程度ということになりますね。
他のサンゴ砂でも必ずしも同じとは言えませんが、これを参考にしていただければ目安にはなると思います。
▼アラゴナイトサンドについてはこちら
▼水槽の立ち上げに有効なバクテリア付きのライブサンドについてはこちら
まとめ
*サンゴ砂を厚く敷くことで脱窒に期待できる可能性がある
*サンゴ砂の厚さが必要な生体もいる
*砂に潜るベラやジョーフィッシュ、共生ハゼとテッポウエビ、チンアナゴやニシキアナゴの飼育では5cm程度のサンゴ砂が必要
*特にこだわりがない場合は2、3cmの厚さがおすすめ!
*底面積÷1000が、底砂1cmあたりに必要な量(L)
*アラガライブ4.5kgで、3~4L程度だった
今回は目的別におすすめのサンゴ砂の厚さについて紹介しました。
飼育にサンゴ砂が必要な生体は結構多いですが、どの生体も大体5cmあれば大丈夫な生体がほとんどです。
また厚く敷きすぎるのは危険ですが、敷かない場合におけるデメリットも多いので、やっぱり砂を敷かないよりは敷くことをおすすめします。
目的がないけどサンゴ砂を敷く場合は、あくまで個人的なおすすめですが、2、3cmを目安にするといいでしょう。
皆さんの参考になれば幸いです。