今回は水槽内でかわいい協力関係を見せてくれる「共生ハゼ」の飼育方法について解説します。
本記事で分かること
・共生ハゼとは
・共生ハゼの簡単な飼育法について
共生ハゼとは
「共生ハゼ」は分類学的な分け方ではないのですが、ハゼの仲間の中でもテッポウエビと一緒に生活するものについて一般的にこう呼んでいます。
この関係はテッポウエビが砂を掘ってつくった巣に、周りの監視をする代わりにハゼが住まわせてもらう、という協力関係になっています。
ダイバーにも人気で、自然界のハゼたちもたくさんのダイビングポイントで人気のアイドルになっています。
飼育はカンタンなものが多く、その点も人気の要因ですね。
種類としては「ハタタテ(ヒレナガ)ネジリンボウ」「ドラキュラシュリンプゴビー」「ヤシャハゼ」「ギンガハゼ」「ニチリンダテハゼ」「クビアカハゼ」「ヤノダテハゼ」「オーロラゴビー」etc…
などなど、非常に多岐にわたる種類がいます。
▼共生ハゼについてや、おすすめの種類について詳しく知りたい方はコチラ
共生ハゼの飼育法
環境について。水槽の大きさは?
共生ハゼは小型のものも多くあまり動かないので、環境を安定させることが可能なら種類によっては20cmキューブ水槽程度の大きさからでも可能です。
また、水質変化には強い丈夫な種が多いので、水質に対してそこまでシビアになる必要はありません。
小型水槽ならろ過は外掛けでも十分でしょう。
我が家でもニチリンダテハゼを飼育している25cmキューブ水槽は外掛けフィルターで管理しています。
▼おすすめの外掛けフィルター
ただハゼの例にもれず何かに驚いた拍子に水槽から飛び出してしまうこともあるので、水槽のフタは必須です。
▼アクリル板で水槽のフタを作る方法
水温は25℃で管理するといいでしょう。
共生相手になるテッポウエビは?エビがいなくても飼育可能?
共生相手となるテッポウエビの種類は共生ハゼによってある程度決まっています。
小型の共生ハゼでは小型の「ランドールズピストルシュリンプ(コトブキテッポウエビ)」、中型の共生ハゼでは5cm程度になる「ニシキテッポウエビ」がおすすめです。
自然界では別の種類との組み合わせもままあるのですが、いかんせん普通に販売されるテッポウエビがこの2種類しかいないうえ、どの共生ハゼも水槽内ではこの2種類のどちらかには共生するため、ハゼに合わせてどちらかのテッポウエビを選べば大丈夫です。
ハゼとエビの体格が違いすぎると巣が壊れたりしてしまう可能性もあるので、ハゼとエビのサイズは小さなハゼには小さなエビ、大きなハゼには大きなエビといった感じで合わせたほうがいいです。
海水魚ショップに行くと相性のいいハゼとエビをセット販売していることも多いので、それで購入すれば失敗がなくなるのでおすすめです。
また、共生相手となるテッポウエビがいなくてもハゼのみでの飼育は可能です。
しかし、エビがいないとなんだか落ち着かず臆病になりがちなので、できるだけテッポウエビと一緒に飼育してあげましょう。
逆に、別々のタイミングで水槽に入れるとハゼがエビを見つけた瞬間にそっちに飛んで向かうほど、共生関係は本能的に刷り込まれているようです。
底砂について。厚さは?
底砂は大小入り混じったサンゴ砂を4、5cmほど敷くのがおすすめです。
パウダータイプのサンゴ砂だけだと巣がどんどん崩れてきてしまって作れないので、大豆くらいの大きさの粒から数mm程度の粒までを混ぜた砂にすることがおすすめです。
我が家では、共生ハゼ用の水槽ではcharmさんから販売されている「ばくとサンド ラージ(ひと粒最大2cmくらい)」と、「アラゴナイトサンド(1cmくらいから数mmの粒まで)」を混ぜて使用しています。
▼アラゴナイトサンドについてはコチラ
▼サンゴ砂の厚さについてはコチラ
エサについて。おすすめは?
エサは人工餌にもすぐ餌付いてくれることがほとんどなのであまり困りません。
ただ共生ハゼは巣の周りで監視しているため、水面までエサを食べに来ることはあまりないです。
なのでおすすめは沈下性のエサである「メガバイトレッド」や「テトラマリン ミニグラニュール」などですね。
我が家ではニチリンダテハゼにテトラマリン ミニグラニュールを与えていますが、砂の上に落ちたものまでよく食べてくれます。
もし人工餌に反応しない場合は、冷凍ブラインシュリンプなんかをスポイトで目の前に流してあげると、食いつくかもしれないので試してみましょう。
ジッサイに先日閉館してしまったヨコハマおもしろ水族館では、共生ハゼたちに冷凍コペポーダを餌として与えている様子を見たのを覚えています。
そのような冷凍エサは魚にとっての嗜好性が高いので、万が一人工餌を食べないときにはおすすめです。
混泳は?
混泳は、共生ハゼを食べてしまうような肉食魚や、他の共生ハゼ以外とならおおむね問題ない場合がほとんどです。
肉食魚については言うまでもありませんが、共生ハゼは他の種の共生ハゼに対して排他的な場合が多く、水槽が大きくないときの混泳はあまりおすすめできません。
また、同種でもペア(2匹)より多くの個体(3匹以上)での飼育は喧嘩に発展することがあるのでおすすめしません。
サンゴとの相性は?
結論からいうと、何の対策もなしだとよくはありません。
というのも、ハゼ自身というよりも共生相手のテッポウエビが巣をつくる際に、ライブロックの下やサンゴ砂の中にこれでもかというほど穴を掘るんです。
ジッサイにテッポウエビは、自然界では1mほどの長さの巣をつくることもある(※)といいます。
※「サンゴとサンゴ礁のはなし 南の海の不思議な生態系」本川達雄 著 より
なので水槽内で安定していないレイアウトは崩れてしまう可能性がありますし、底砂の上に直接ものを置いているとエビにどかされたり巣の材料にされてしまうこともあります。
したがってレイアウトを壊されないようにするために、
・砂の上には動かされて困るものを置かない
・ライブロック同士を接着・固定して重くする
・ライブロックを砂に埋めて水槽底面に直接触れるように置き、安定させる
・ライブロックをライブロックスタンドで浮かして、エビが砂を掘っても干渉しないようにする
などの対策が必要になってきます。
▼ライブロックスタンド
▼アクアスケープのような水槽用パテでライブロック同士を接着するのもおすすめ
あとはそもそも「共生ハゼ&テッポウエビの単独水槽にしてしまう」という手もあります。
我が家ではこの手段ですね。
これならいくら好き放題されても困ることがありませんし、何よりハゼ&エビの共生関係をじっくり観察することができるので実はかなりおすすめだったりします。
またここだけの話、つい先日「巣が崩壊してハゼが路頭に迷う&テッポウエビ生き埋め事件」が発生したのですが、そんなときもすぐに底砂に手を突っ込んでエビを救い出し、ハゼと引き会わせて新たな巣をつくらせることに成功したんです。
小型水槽は安定させるのが難しい分、こういうときの取り回しの良さはやっぱりいいなあと思う事件でした。
※初心者さんがいきなり30cmキューブ水槽未満の大きさの小型海水水槽を立ち上げることは、個人的にはあまりおすすめではありません(水質・水温などが安定させづらいから)。
ほかに水槽があって「温度管理はエアコン!」「他水槽の飼育水やバクテリア付きのろ材を立ち上げに使える!」といった時(我が家はコレ)には小型水槽の立ち上げもおすすめです。
あるいは30cmキューブ水槽から始めてみるといいかもしれません。
まとめ
*共生ハゼはテッポウエビと協力して生きる
*水槽は20cmキューブ程度からでも可能。フタは必須
*小型の共生ハゼなら「ランドールズピストルシュリンプ(コトブキテッポウエビ)」、中型の共生ハゼなら「ニシキテッポウエビ」が共生相手としておすすめ
*エビなしでも一応飼育できるが、エビとの飼育が好ましい
*底砂は大小入り混じったものを4、5cm敷くのがおすすめ
*エサは人工餌にもすぐ慣れる。食べないときは冷凍エサで
*混泳は他の共生ハゼや同種でも3匹以上は注意が必要
*レイアウト崩壊対策をした方がいい。共生ハゼとエビのみの水槽もおすすめ
今回は共生ハゼの全般的な飼育法についてお話しました。
正直、ハゼとエビがけなげに協力する姿は眺めているとめっちゃ和みます。
今回は詳しくは紹介していませんが、共生ハゼはどの種類も魅力的でかわいらしい種類ばっかりなので気になったらぜひ飼育されてみてください!
飼育を検討されている方は、水族館でチェックしてみるのもおすすめです。都内だと「しながわ水族館」に共生ハゼとクマノミがテーマになった水槽がありますよ~。
▼おすすめの共生ハゼの種類について
▼ニチリンダテハゼの飼育法について
※本記事を執筆するにあたり使用した参考文献
瀬能宏・鈴木寿之・渋川浩一・矢野維幾(2021)「新版 日本のハゼ」平凡社
「日本に産するハゼ類と共生するテッポウエビの分類学的検討」野村恵一、2003、日本生物地理学会会報第58巻、49-70