海水水槽において、白点病や細菌病の対策に効果があると言われる「オキシドール」ですが、実際はどうなのか。
今回はオキシドールを実際に白点病の魚に使用してみた結果と感想についてお話しします。
本記事で分かること
・実際にオキシドールを添加した結果
・オキシドールの効果
・オキシドールのデメリット
オキシドールとは?
オキシドールとは濃度3%ほどのうすい過酸化水素水のことで、白点病の原因となる白点虫やその他の悪玉細菌などへの殺菌効果を持ちます。
なお、白点虫に効果を持つのに対し、魚やサンゴ、バクテリアなどはオキシドールを分解できるカタラーゼという酵素を持っているため、影響を受けません。
またオキシドールは実際に白点病対策として販売されている▼ICHという商品の主成分だそうで、ここから考えても効果があることを伺えます。
実際に使ってみた
というわけで早速、実際に使ってみました。
今回使用するのは、▼こちらの60cmワイドオーバーフロー水槽
総水量はメインタンクとサンプを合わせて130L。
当時の飼育生体は魚が11匹とその他の貝やヤドカリなど、サンゴはソフトコーラル、LPSです。
白点病なのは、上の写真にも写っているこちらのゴマハギ君です。
導入してしばらくは安定していました。しかしサンゴを追加した際に、砂を巻き上げてしまったのか、はたまた白点虫を持ち込んだのか、ある日からポツポツと白点がつき始め、悩まされるようになってしまいました。
エサの食いはよく、白点がついている以外の事柄にはなんの問題もなく生活できていました。
それでは早速オキシドールを入れていきます。
オキシドールはこちらです。
マツキヨで500mLが300円くらいでした。
添加量は海水4Lに対しオキシドール0.5mLです。この量を1日3回に分けて入れます。
3回に分けて入れるのは、濃度を安定させるためです。規定量を一度に入れても構いませんが、そうすると水槽内でオキシドールが多い時と少ない時の差ができてしまいます。
これでは殺菌効果が落ちてしまいますので、3回に分けることをおすすめします。
私の水槽は総水量130Lなので、添加量は
130L÷4L=32.5
32.5×0.5mL=16.25mL
となり、1日に全部で16.25mL、1回あたりでは5.4mLほどを添加することになります。
ちょうどレッドシーさんの硝酸塩テストキットについてきた注射器があったので、これで計りとって一度に5mLを1日3回添加するというのを、1週間ほど続けてみました。
その結果がこちらです。
白点の数は明らかに少なくなり、ほとんど見えなくなっています。
この時オキシドールの添加以外にとくに水槽をいじっていないので、これはオキシドールによる効果で間違いないと思います。
正直オキシドールにはあまり期待していなかったので、この結果には驚きました。
負の側面
しかしオキシドールには負の側面もありました。
ゴマハギが完治したのちも同居しているヒフキアイゴに白点が出始めたので、私はその後も添加を続けていました。
しかしある日水槽を覗くと、混泳魚であるキンギョハナダイのヒレが溶けており、そのままなすすべなく翌日には亡くなってしまいました。
ショッキングなので当時の写真は載せないでおきます。
これはのちに調べたところ細菌性の病気のようです。
その後さらに混泳魚のマンジュウイシモチも元気がなくなり、さらにエサを食べなくなりした。こちらはグリーンFゴールド顆粒による薬浴で調子を取り戻したのですが、ちょうどそのとき家を数日はずす用事ができてしまい、帰ってきた時には失踪していました。
おそらく何らかの原因で弱って亡くなり、ヤドカリなどに食べられたのだと思います。
マンジュウが、細菌性の病気に効くグリーンFゴールド薬浴で一時持ち直したことからも、原因は細菌性だと考えられますね。
▼当時の様子を書いた日記。少々閲覧注意ですが、こちらには写真が載せてあります。
▼グリーンFゴールド顆粒を用いた海水魚の薬浴について
さらに調べると、この原因は明らかにオキシドールでした。
というのも、先程オキシドールはバクテリアなどの生物には問題ないと言いましたが、それは好気性のバクテリアについてであって、嫌気性のバクテリアについてはその限りではありません。
嫌気性バクテリアはオキシドールを分解できる酵素「カタラーゼ」を持っていないからです。
また、それだけでなく私はこのとき硝酸塩除去の目的で炭素源の添加も行なっていました。
▼炭素源で硝酸塩を減らす方法についてはこちら
炭素源の添加では嫌気性バクテリアを増やすことで脱窒を促すのですが、この時嫌気性バクテリアだけでなく、魚にとって有害な細菌も増えることがあります。
通常のよくろ過が立ち上がった水槽であれば炭素源によって嫌気性バクテリアがよく増え、よく脱窒をしてくれるのですが、私の水槽ではおそらくこのときオキシドールの影響で嫌気性バクテリアが減っていました。
これにより本来抑えられていた有害な細菌が炭素源を利用して増え、細菌病に弱めなキンギョハナダイや、まだ比較的小さく体力のなかったマンジュウイシモチが亡くなってしまったのだと考えられます。
どうすればよかったのか
この惨事の原因は主に
原因
・オキシドールによる嫌気性バクテリアの減少
・炭素源の添加による悪玉細菌の増加
だと予測できます。
そこから考えるに、対策法としては
対策法
・オキシドール治療は、本水槽ではなくバケツ隔離などで行う
・オキシドール添加の際は炭素源の添加をやめる
・オキシドール添加の際は、水槽にバクテリアを添加しつつ行う
などがありますね。
バケツに関しては、ゴマハギやヒフキアイゴが速すぎて捕まえられなかったため仕方ない(元はバケツ換水+オキシドールの予定だった)のですが、他の2つはやるべきでした。
なお、魚を捕まえられるのであればバケツに隔離して毎日換水+オキシドールが、魚体にやさしく効果を出すには最もよい気がします。
またバクテリア添加に関しては、嫌気性バクテリアが含まれる商品でないといけないので、気をつけなければいけません。
おすすめは「土壌バクテリア」ですね。海水水槽用に嫌気性の脱窒菌を主とした多くのバクテリアが配合されていて、脱窒を中心としたろ過に多大な効果をもたらしてくれます。
他の商品では「バイコムのスーパーバイコム21PD(海水用)」なんかもよさそうです。
▼土壌バクテリア。海水水槽用のバクテリア剤としては最もおすすめ。我が家ではこれの使用でコケが目に見えて減った。
▼スーパーバイコム21PD海水用。嫌気性バクテリアが入ったバクテリア剤。嫌気性バクテリアのみを集中的に補給したいときにおすすめ。
まとめ
*オキシドールは白点病・細菌病に効果はある
*魚、無脊椎動物、サンゴ、好気性バクテリアには影響なし
*嫌気性バクテリアはダメージを受けてしまう
*可能ならバケツ隔離でやるべき
*本水槽でやるなら嫌気性バクテリアの添加と、炭素源添加の一時停止
オキシドールは白点病に対しては明らかに効果がありますが、バクテリアに対しては悪い効果ももたらします。
しかしうまく使えば十分に有用な使い方をできますので、使用される場合はしっかりと対策をすることをおすすめします。