今回は、カクレクマノミの稚魚育成に必要なエサである「ワムシ」について、我が家で実践した培養方法と、普段の維持管理についてご紹介します。
本記事で分かること
・ワムシの培養と普段の維持管理について
カクレクマノミが産卵したら…
カクレクマノミをペアで飼育していると、突然産卵しだすことがあります。
せっかくの繁殖なので子供を育ててあげたいものですが、初めての産卵だとなにをすればいいのかわからないです。
私もそうで、23年の7月に初めて産卵したときは焦ってめっちゃ調べまくりました。
なんとか調べまくり、我が家のカクレクマノミペアが初めて産卵した稚魚は、産卵から5か月の23年12月で3匹(少ないけど泣)大人にすることができました。
諸々の失敗や管理の不手際でかなり★にしてしまい、正直拙かった部分は多々あるかと思いますが、クマノミ繁殖完全初心者から繁殖に一応成功した流れを皆様にお伝えできればと思います。
そこでまずは一般的な産卵~稚魚飼育の流れを大ざっぱにまとめてみます。
カクレクマノミ稚魚飼育の流れ!
1.カクレクマノミが産卵する
2.孵化するまでの期間(7~10日くらい)に、必要な道具・環境を用意する
3.稚魚のエサとなる「ワムシ」に「淡水産クロレラ」を与えて増やす
4.卵が孵化する(ハッチアウト)
5.稚魚を専用の飼育容器に隔離する
6.稚魚にワムシを与えて育成(~7日目)
7.稚魚にワムシ・孵化ブラインシュリンプを与えて育成(~1か月くらい)
8.稚魚に孵化ブラインシュリンプを与えつつ、人工エサに慣らす(~2、3か月くらい)
9.稚魚が完全に人工エサに慣れたら育成はほぼ完了!
こんな感じです。
これらについて、必要な道具、実際の育成方法、エサや普段の管理、稚魚の成長など、項目ごとに分けて各記事で解説していきます。
というわけで今回は「ワムシの培養・維持管理方法」について詳しく解説していきます。
ワムシとは
ワムシは正式な名前を「シオミズツボワムシ」といい、微小な動物プランクトンで、自然界では汽水域に生息しています。
大量に繁殖する性質があるため、海水魚の稚魚飼育や養殖ではエサとして広く利用されています。
ワムシ培養に必要な道具
まずはワムシ培養に必要な道具をまとめます。なお、普通の海水魚飼育でも使うような道具は皆さんすでに所持されているかと思いますので、省きます。
ワムシ培養に必要な道具
・ワムシ培養容器最低2つ(安価なプラスチック容器でよい)
・エアー関連用品
・増やすためのワムシ
・淡水産クロレラ
・シリンジ
・ワムシネット
これらの道具と我が家で実践した実際の培養方法について、ここからご説明します!
実際の培養方法
汽水を準備して水温を合わせる
必要なものを揃えたら、まずは用意した飼育容器に、比重1.010~1.020程度の汽水を注ぎます。
ワムシは非常に強健な生きものなので、汽水の比重はテキトーで大丈夫です。
注いだ汽水はヒーターで水温を25℃近辺に合わせます。
この時、容器は2つ以上用意しておくことをおすすめします。
後述しますが、ワムシは非常に全滅しやすいため、2つ以上の容器を用意すれば片方が全滅してももう片方から補充して維持することができるからです。
おすすめは上の画像のような管理方法。大きな容器に水(水道水でよい)を注ぎそこにヒーターを入れて水温管理をしつつ、稚魚とワムシの水槽の水温も一緒に管理する方法ですね。
ちなみにワムシも酸素を必要とするので、ワムシの飼育容器にもエアーレーションをしっかりとかけておきましょう。
この写真の上部中央に見えるような分岐タップを使うと1つのエアーポンプで複数の容器にエアーを供給できるので、非常に便利です。
汽水にワムシを放つ
容器が準備できたら、購入したワムシを容器内に注ぎます。
2つ容器があるなら半分ずつ注ぎますが、注ぐ前にワムシが入っている容器を何度か上下逆さにして、しっかり攪拌したうえで注ぎましょう。
▼チャームさんのワムシは活きもよく、増殖もよくするのでおすすめ!
ワムシに淡水産クロレラを与える
ワムシは淡水産クロレラをエサにして増やす必要があります。
海産クロレラというものもありますが、これはワムシの栄養強化には使えますが、普段のエサとしては向いていないようです。
この淡水産クロレラをシリンジで吸い取って、ワムシに与えます。
クロレラを入れるとワムシ水槽の水の色が緑色になりますが、ワムシがクロレラを食べると水の色が黄色っぽくなってくるので、そうしたらまたクロレラを与えます。
ワムシの栄養強化について
海水魚の稚魚飼育においてはDHA・EPAなどの不飽和脂肪酸が重要です。これは海水魚が自分の体内で不飽和脂肪酸をつくることができないためです。
淡水産クロレラにはこれが含まれていないため、稚魚に与える前にDHA・EPAを含む「海産クロレラ」や「栄養強化剤」を与えて栄養を強化する必要がある、というのが普通の説明です。
栄養強化を行うためには、稚魚に与える前日にワムシを培養容器から別の容器に移し、その容器内で栄養強化剤を与えて栄養強化する、という手間がかかります。
しかし本記事は初心者の方が稚魚育成に取り組むハードルを下げることで、なるべく多くの方に稚魚育成に親しんでもらいたいという目的で作成しているため、その過程については省きました。
また我が家のカクレクマノミの稚魚育成においては、チャームさんの淡水産クロレラを与えて増やしたワムシ(栄養強化なし)と孵化ブラインシュリンプ(栄養強化なし)、人工餌(メガバイトレッド)で稚魚育成を完了できたため、本記事では栄養強化については言及していません。
ただし栄養強化を行うことで稚魚の生存率が高まることが予想されるため、より多くの稚魚を大人にしたい場合、栄養強化をすることをおすすめします。
栄養強化の方法については、今後別記事にて解説する予定です。
▼栄養強化剤
淡水産クロレラを補充する
クロレラを与えてから1日ほどたってワムシがクロレラを食べると、水の色がだんだん薄く黄色くなってきます。
色が黄色くなってきたら再びシリンジでクロレラを吸い取ってワムシに与えます。
1週間くらいこれを続けているとワムシがかなり増えてきます。ワムシが増えてくるとクロレラの消費量も増えてきて、クロレラを入れても半日もせず水が黄色くなってしまうことがあります。
そういう時はクロレラを与える量を増やして、半日から1日くらいかけて黄色に変わるくらいの量に調節しましょう。
稚魚に与える
上記のワムシ培養はカクレクマノミの稚魚が生まれる前までに終わらせておきましょう。
稚魚が誕生したら、生まれたその日からワムシを与えます。
与える時は↑のようなネットで濾しとって与えます。ワムシ容器から大きなスポイトで水を吸い取って、ネットに水を通すとワムシだけがネットに引っかかるので濾しとることができます。
ワムシを濾しとったネットを稚魚の飼育容器に入れて、ワムシを放つと稚魚が食べだします。
増えすぎたら間引く
ワムシの維持・管理ではこれが最も重要です。
ワムシはものすごい速度で増殖していきますが、ある一定の密度を超えて増えすぎると、酸欠になって簡単に全滅してしまいます。
そのため増えすぎたワムシを定期的に間引く必要があります。
方法はカンタンで、ワムシの培養容器から別の小さい容器に一部の水を移し、残りを捨てます。
この際、培養容器の底にゴミやコケが溜まっているので、ついでに掃除しておきましょう。
掃除が終わったら、一旦水を移した小さい容器から元の容器に水を戻し、足りない分の汽水を人工海水で作って補充します。
そうしたらいつものようにクロレラを与えて、間引きは完了。
まとめ
ワムシの培養、維持・管理方法について
*ワムシは海水魚の稚魚に最適な活エサ
*培養容器は2つ以上用意しよう
*汽水で培養可能
*淡水産クロレラを与えて増やす
*稚魚に与える際はネットで濾して与える
*増えすぎたら間引きする
今回はカクレクマノミの稚魚育成に必須のエサである「ワムシ」について、培養、維持・管理方法をご紹介しました!
普段のお世話さえきちんとしておけば維持するのも難しくないので、お家で海水魚が繁殖した場合にはぜひ挑戦してみてください!
カクレクマノミの稚魚の実際の育成方法や、道具の使い方は以下の記事で解説しています。