というわけで、今回はみりんで硝酸塩を減らす方法についてお話しします。
本記事で分かること
・みりん添加で硝酸塩が減るのかどうか
・なぜみりんで硝酸塩が減るのか
・みりん添加が、単純な炭素源の添加と違うところ
・みりん添加の危険性について
みりんで硝酸塩は減る?
結論から言うと、減ります。
毎日添加を続ければ、これでもかと言うくらい減ります。
みりんは安価ですし、スーパーで手に入るため入手にも困りません。
みりん添加の基本は、水槽の容量にもよりますが、1日1回ほんの少しみりんを水槽に入れるだけで十分です。
実際私の水槽では、この方法で硝酸塩を低い値に保っています。
しかし、みりん添加は有用で魅力的な方法ですが、気をつけないと水槽崩壊さえ招く可能性のある方法です。
みりん添加は危なくない?
たしかに、なにも考えずにみりん添加を行うのは水槽の白濁りや生体の死亡を招き非常に危険です。
しかし、みりん添加という発想そのものは理にかなっており、実際うまく扱えばかなり有用です。
その理由は、みりんで硝酸塩が減る原理を知ればわかります。
なぜみりんで硝酸塩が減るのか
水槽内やそのろ過層には、生体の出す有害なアンモニアを
アンモニア→亜硝酸→硝酸塩
と酸化していくことで、ろ過を担う好気性(酸素を好む)バクテリアが存在する反面、少数ですが硝酸塩を
硝酸塩→亜硝酸→窒素
と還元することで生きている嫌気性(酸素を嫌う)バクテリアもいます。
このバクテリアは脱窒菌と呼ばれ、嫌気環境(酸素がないか少ない環境)でしか優先的に増えることができません。
また増える際には炭素を栄養として利用します。
このことを利用して
「水槽内に嫌気環境を用意してあげて、餌として脱窒菌に炭素を提供することで水槽内の硝酸塩を低く保とう」
というのが、炭素源(硝酸塩除去剤)による脱窒です。
これについてはこちらの記事で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
炭素は砂糖やアルコールに含まれ、実際にそう言ったものを水槽に添加することで、水槽内の硝酸塩を低く保つ「VSVメソッド」というものが存在します。
これは一歩間違うと水槽崩壊も招きかねない方法です。
しかしそれを一般人でもできるように企業が販売してくれているものが、市販の炭素源(硝酸塩除去剤)なのです。
具体的にはこのようなものがあります。
しかし、この炭素源は継続して購入するにはちょっとお高い商品が多いです。
また、重ねて言いますが炭素源の主成分は糖分やアルコールです。
そこでついに「みりんで硝酸塩が減らせるんじゃない?」という考えが浮かぶのです。
しかしこのみりん添加は、まだ技術的に熟成されきっているものとは言えません。
したがって行うには通常の炭素源添加の注意点に加えて、さらに注意するべきポイントが存在します。
ここからはそれらの注意点についてお話しします。
なお、通常の炭素源添加における注意点や危険性、有用性は、こちらをご覧ください。
みりん添加を行う際の注意点
みりん風調味料は絶対ダメ
まず、みりんといってもみりん風調味料ではなく、必ず本みりんでなくてはなりません。
みりん風調味料には食塩等関係のない成分が入っているからです。
購入の際には注意しましょう。
規定量が確立されていない
みりん添加の最も大事で注意せねばならない点として、規定量が確立されていないというものがあります。
しかし、入れなさすぎても効果は出ませんし、入れすぎると白濁りが起こって水槽内の生体が酸欠になる可能性があります。
適切な量を添加している限りは魚にはなんの問題もなく元気に飼育できますが、この量を探す必要があります。
適切な添加量の探し方
水槽や濾過槽の大きさにもよりますが、まず最初は一日0.5ml~1ml程度のごく少量の添加から始め、硝酸塩の試薬で濃度の変化を毎日モニターします。
硝酸塩が減ってきているようならそのまま添加を続け、そうでないなら少しずつ添加量を増やしていきます。
最終的に硝酸塩が目的の値になったら添加量を少しずつ減らし「過剰添加にはならないが硝酸塩が増加もしない添加量」に調整しましょう。
なお、この過程で水槽が白濁りするようなら、白濁りが収まるまで添加はやめ、次の添加では添加量を減らしましょう。
当時の私の水槽は60cm規格水槽ですが、1日数ミリリットルの添加で維持できているため入れすぎには本当に注意しましょう(魚の数や大きさにもよると思います)。
硝酸塩の試薬は用意するべき
以上の点から、みりん添加において硝酸塩のモニターは必須です。
検査結果が曖昧になりがちな試験紙タイプのものではなく、きちんと試薬タイプのものを用意しましょう。
また、海水魚飼育において硝酸塩などの成分のモニターは必ずと言っていいほど行うべきですので、みりん添加を始めるついでに購入というのもよいと思います。
※なお、みりん添加による硝酸塩のコントロール法は必ずしも技術的に熟成されているものとは言えません。行う際は自己責任でお願いします。
番外編
最後に、炭素源添加と一緒に利用するとよいものをご紹介します。
それは
このシーケムマトリックスです。
これはろ材なのですが、高密度で多孔質になっており水槽に投入すると内部に嫌気環境ができるとされています。
実際に手に取ってみると、小石状で非常に軽く、多孔質ということがわかります。
これを網に入れ、外部フィルターのいちばん最後に水が通る場所に入れました(他のバクテリアが利用してしまって、酸素が少ない水が通るから)。
これをフィルターに入れて、みりんの添加、水換えと合わせるとすぐに硝酸塩が下がったため、安全そして簡単に嫌気環境を作りたい方にはおすすめだと思います。
まとめ
・たしかにみりんで硝酸塩は減る
・有用だが、うまく扱わないと危険も伴う
・みりん風調味料はNG
・過剰添加に十分気をつける
・硝酸塩のモニターは必ずする
・みりん添加は嫌気性バクテリアが繁殖できるろ材とのセット利用が効率が良い
いかがだったでしょうか。
この記事の目的は、ジッサイには使用したことのない方がみりん添加に否定的な話をしている場合が多かったので、自分で使ってみたうえで客観的に考えてみようというものです。(それでもあくまでも私の意見ですが。)
結果としてみりん添加ではたしかに硝酸塩は減らせますが、安全に実施するには正しい知識と焦らない慎重さが必要です。
うまく使えば安価に硝酸塩を減らせるのは事実ですが、正直安易に使うものでもないですね…。
ちなみに私の水槽では長い間みりん添加で、硝酸塩を0〜5ppm程度の範囲で管理していました。
話の腰を折りますが、水槽の安全性を重視するなら、きちんと規定量が確立されているレッドシーさんなどの企業が販売している炭素源(硝酸塩除去剤)を絶対におすすめします。
お高いですが、企業がこだわって作っている分、安全性は非常に高いです。
私はコストなどの関係でみりんで硝酸塩の管理を行なっていますが、自身がとれるリスクの大きさときちんと天秤にかけて判断しましょう。
重ねて言いますが、もし行う場合は自己責任でお願いします。