というわけで今回は、炭素源(硝酸塩除去剤)で硝酸塩を減らす方法についてお話しします。
本記事で分かること
・炭素源(硝酸塩除去剤)とは
・炭素源で硝酸塩を減らす方法
・炭素源で硝酸塩を減らすときの注意点
・炭素源としておすすめの商品
炭素源(硝酸塩除去剤)とは
まず炭素源とは、その名の通り炭素を含む物質のことです。具体的には砂糖やアルコールなどです。
なぜ炭素源で硝酸塩が減らせるのか
水槽内でろ過を担うバクテリアは基本的に硝化菌と呼ばれるもので、このバクテリアは生体の排せつ物から生まれたアンモニアを、
アンモニア→亜硝酸→硝酸塩
とより無害な物質に酸化していくことでろ過を担っています。
しかし水槽には少なからずこの硝酸塩を
硝酸塩→亜硝酸→窒素
と還元を進めることで生きているバクテリアもいます。
このバクテリアはこのバクテリアは水槽内の硝酸塩を、最終的に窒素として空気中に戻す脱窒をしてくれるので、脱窒菌と呼ばれます。
脱窒菌は嫌気環境(酸素がない環境)を好み、そのような環境で優先的に増殖できます。また炭素を栄養として増えます。
脱窒菌は本来水槽内では半年~一年ほどかけてゆっくりと増えていくものですが、炭素が豊富にある環境では増殖は早まります。
このことを利用して、炭素を意図的に水槽に入れ、脱窒菌に増えてもらい頑張ってもらうことで硝酸塩を減らそうというのが「炭素源(硝酸塩除去剤)の添加」なのです。
これをすることで、硝酸塩を低い値で保つことができます。
やり方は非常に簡単で、水槽に適切な量の炭素源を添加するだけです。
炭素源(硝酸塩除去剤)を添加する
炭素源は、硝酸塩除去剤として販売されています。
そのような商品の代表が、レッドシーさんが売り出しているNO3:PO4-Xです。
私も利用していました。初めて炭素源を添加する場合はこれがおすすめです。これは炭素源として有名なもので、減らしたい硝酸塩の水準や水槽の水量に合わせて規定量も決まっているため過剰添加の心配も少なく、とてもやりやすいです。
炭素源添加は魅力的な方法ではありますが、一歩間違えると水槽崩壊の危険性もあるので、行う際は十分に気をつけなければなりません。
次項では炭素源を使って硝酸塩を減らすときの注意点についてお話しします。
また、この炭素源としてみりんを利用するという荒業も存在します(実は私は、みりん添加で硝酸塩を減らすことに成功しています)。
みりん添加で硝酸塩を減らす方法については、こちらの記事もご覧ください。
炭素源で硝酸塩を減らすときの注意点
プロテインスキマーが必要なこと
この方法は増えたバクテリアの死骸などを処理する必要があるので、プロテインスキマーがないとその死骸が再び分解されて、硝酸塩がまた増えてしまいます。
また嫌気環境を好むバクテリアといっても呼吸をするため、水槽内の酸素を利用します。よってプロテインスキマーで水槽内の溶存酸素量を増やさないとバクテリアが大量死して水が白濁りしてしまうようです。
私の水槽は海道達磨というプロテインスキマーを付けているので、このようなことは基本的に起こりませんが、間違えてドバっとみりんが出てしまった時の翌日に水槽が白濁りしてしまったことがあります。
白濁りが起こったときは、基本は放置していれば半日もすれば元に戻ります(私は放置しています)が、場合によっては酸欠で生体が弱ってしまうこともあるようです。
そのためもし白濁りが起こってしまったら、多めに水替えを行いプロテインスキマーをしっかりと稼働させておくのが安全です。
なお、この方法で利用するプロテインスキマーは、性能の低いエアーリフト式ではなく、強力はスキミング能力を持つベンチュリ―式をお勧めします。
嫌気性のバクテリアがいないと機能しない
この方法は嫌気性の脱窒菌の力に頼った方法です。
つまり、水槽内に嫌気性のバクテリア(脱窒菌)がいないか、量が少なすぎると機能しません。したがってまずは、その数を増やす必要があるのです。
脱窒菌を増やす方法
炭素源で増やす
炭素源添加によって硝酸塩がすぐに減らない場合、脱窒菌の数自体が少ない可能性があります。したがってまずは添加量を少なめにし、脱窒菌が増えるための期間を設けましょう。
脱窒菌は本来水槽において半年ほどをかけてじっくりと増えていくものです。
そのため炭素源添加によって増やす場合は、シビアになりすぎる必要はありませんが、いきなり規定量の炭素源を入れるよりも、規定量の半分程度から始めて徐々に増やしていくのがおすすめです。
外部から持ち込む
手っ取り早く脱窒菌を増やしたい場合にはこちらがおすすめです。
嫌気性のバクテリアが含まれている商品は、バイコムのスーパーバイコム21PD(海水用)、べっぴん珊瑚の土壌バクテリアなどです。
おすすめはべっぴん珊瑚の土壌バクテリアです。この商品には好気性(酸素を好む)のバクテリアと、脱窒菌を含む嫌気性のバクテリアがバランス良く含まれており、水質浄化にも貢献できます。
バクテリア添加の注意点として、バクテリアの添加直後に炭素源を添加してしまうと、炭素源によってバクテリアが爆発的に増殖することで酸欠が起こってバクテリアが大量死し、水槽が白濁りします。この酸欠により水槽内の生体に影響が出てしまうので、バクテリアの添加と炭素源の添加は同時に行うべきではありません。
こんなことにならないように注意しましょう。
嫌気環境が水槽内に存在しない・不十分である
脱窒菌は酸素がある環境でも生きていけますが、そのような環境では好気性のバクテリアばかりが増えてしまうため、嫌気性の脱窒菌は優先的に増えることができません。
そのような状態ではいくら炭素源を添加したところで硝酸塩は減らないので、脱窒菌が増えられるよな嫌気環境を水槽や濾過槽内に作ってあげる必要があります。
また、嫌気環境は本来ライブロックの奥深くに存在しているため、基本的にはライブロックの追加によって、嫌気環境を確保することになるでしょう。
しかしライブロックの追加は面倒という場合や、ライブロックに付着した有害生物の侵入を防ぎたい場合もあるでしょう。
そのような時は外部フィルターやオーバーフロー水槽のサンプ内に、嫌気環境がつくれるようなろ材を入れたり、高品質な人工ライブロックを導入するのがおすすめです。
いくつか紹介します。
シーケム マトリックス
シーケムさんが出しているマトリックスという商品です。
この商品は小石のような見た目をしており、非常に多孔質で内部に嫌気環境が形成されるようです。
実際に利用してみたところ、炭素源との併用で硝酸塩が減ることを確認しました。
なお、私は外部フィルターで最後に酸素が使われた水が通るであろう一番上に設置しました。もちろんサンプにそのまま設置するのもありだと思います。
お値段は少々張りますが、非常に効果的で有意な商品です。
シポラックス
セラさんが出している商品です。見た目は普通のろ材ですがかなりこだわって製造されており、内部に嫌気環境ができるようになっています。
使い方は先ほどのシーケムマトリックスのように、ろ過槽に設置するだけです。
値段もシーケムマトリックスよりは安く、手軽に嫌気環境がつくりたい場合におすすめです。
いくつか種類が存在しますが、嫌気環境の形成はどれでも期待できるようです。
マメライブロック
マメデザインさんが出している商品で、高品質な人工ライブロックです。
非常に多孔質になっており、内部に嫌気環境が形成されます。私もレイアウトに利用していますが、単にライブロックとしても優秀で、入り組んだ形状でとてもレイアウトがしやすいです。
カラーはブラウン、グレー、パープル(石灰藻カラー)の3種がありますがぶっちゃけパープルだけで十分だと思います。
見た目はこんな感じです。
レイアウトしやすいため、こんな風にトンネルも作れちゃいます。値段はキログラム当たりでは通常のライブロックと同程度です。
過剰添加に気を付けよう
次に、過剰添加に気をつけなければならないことです。
過剰添加をしてしまうとバクテリアが必要以上に増え、これまた酸欠でバクテリアの大量死が起こってしまいます。
なので添加する際は、NO3:PO4-Xのような規定量が示されているものでは、きちんと規定量を守りましょう。
硝酸塩をまず減らしてから添加を行う
炭素源添加は、水槽内の硝酸塩が私の水槽のように高すぎると効果が出にくいです。そのため使い始める前に水替えをして硝酸塩を下げておきましょう。
私の水槽では硝酸塩が高い状態で添加しても中々下がらなかったため、毎日バケツ1杯分の水換えをした後に添加することを続けて、10日ほどしたあたりから硝酸塩が下がり始めその後は低い値で維持しています。
硝酸塩が下がっても添加はやめない・添加忘れには気をつける
添加期間中は、その炭素源によって水槽内のバクテリアバランスが保たれる形になります。しかし添加をしばらく忘れてしまうと、増加した嫌気性のバクテリアが減少し、水槽内のバクテリアバランスが崩れます。
そうなると水槽内の環境までもが崩れますし、添加を再開したときもまた嫌気性バクテリアを増やすところからになってしまうので、効率も悪いです。
したがってこの方法では硝酸塩が目的の値まで下がっても、量は減らしても添加そのものはやめないのが基本です。
また添加忘れにも気をつけましょう。
おすすめな商品
最後に炭素源としておすすめな商品を紹介します。
NO3:PO4-X
この商品はレッドシーさんが出している商品です。添加量について、水量や目指す水槽環境にあわせて細かに決められており(詳しくはレッドシー リーフケアレシピを参照)、値段は高めですが過剰添加の心配がなく安全に炭素源添加を行えるため、迷ったらこれにしておけばいい感があります。
私も使ったことがありますが、注射器がついており規定量の添加はとても容易です。木工用ボンドのようなにおいがします。
効果については確かにありますが、私の水槽では生体が多すぎて規定量よりも多く添加しなければならず、消費が激しすぎるためみりんにバトンタッチとなりました。
AZ-NO3
アクアギークさんが出している商品です。真実は定かではありませんが、中身はみりんに近いといわれています。
こちらもNO3:PO4-Xほどではないにしろ規定量がきちんと示されており、安心して利用できる製品です。
値段はNO3:PO4-Xよりも高く非常に高価ですが、そういった意味では期待できる商品だと思います。
ドクターバイオ
コトブキ工芸さんが出している商品です。ドクターバイオフィルター60(上部フィルター用)、ドクターバイオ60、ドクターバイオキッス25の3種類があり、状況に合わせて選択できます。上の2つとは違い淡水・海水両用なのも特徴のひとつです。
単価は紹介している3商品の中で最も安く、毎日の添加は必要なくフィルターに入れるだけでよいので、まずは手軽に炭素源添加を始めたい人には非常におすすめできます。
まとめ
・炭素源(硝酸塩除去剤)添加では比較的簡単に硝酸塩が減らせる
・プロテインスキマーは必須
・嫌気環境の有無や脱窒菌の数にも注意
・過剰添加は絶対NG
・添加忘れ、添加中止には注意
・炭素源添加は嫌気性バクテリアが繁殖できるろ材とのセット利用が効率が良い
いかがだったでしょうか。
重ねて言いますが、炭素源(硝酸塩除去剤)添加は魅力的な方法ですが、一歩間違えると水槽崩壊の危険性もある方法です。
しかしきちんと用法用量を守って行えば、あなたの水槽の硝酸塩対策にかならずや役立ってくれるでしょう。
皆さんも炭素源を利用して楽しくマリンアクアライフを送りましょう!