というわけで、今回はシュノーケルをするときに注意すべき生物とその対策についてお話しします。
本記事で分かること
・シュノーケル時に注意するべき危険生物とその対策
シュノーケルってそもそもなに?
シュノーケルは一言でいうと「パイプ状の棒を咥えることで、水中に顔をつけた状態でも呼吸できるようにする道具」です。
また「シュノーケル」を使って海に入ることを「シュノーケリング」といいます。
シュノーケルを使うことで、泳ぎの得意でない方でも簡単に水中世界を観察することができます。
また大人でも子供でも注意点さえ守ればしっかり楽しめるレジャーなので、夏の海ではシュノーケリングをする方をよく見かけますね。
というわけで次からはジッサイにシュノーケリングするときに気を付けるべき危険生物を紹介します。
シュノーケリング時の危険生物とその対策
ガンガゼ・ラッパウニ
危険性
ガンガゼはウニの仲間。太平洋側の温かい海に多く生息しています。細く長い毒トゲを持ち、刺さると強く痛みます。
人が死ぬような毒ではないのですが、ガンガゼの嫌なところは「毒トゲが非常に折れやすい」というところ。
そのためとても刺さりやすく、刺さったトゲが手の中に残ってしまう、というようなことが起こります。
ラッパウニは温かく浅い海によくいるウニで、ラッパ上に開いた特別な毒トゲを持ちます。
シュノーケリングするような浅い海にも多いので、注意が必要です。
対策
ウニのトゲは「肌をラッシュガードなどで覆う」だけで刺さる確率は下がります(当然力がかかれば貫通はしますが、かすってしまったときのダメージは軽減できる)。
またシュノーケリングや磯遊びの最中には「岩に手をつく前にガンガゼやラッパウニがいないか都度確認する」といった地道な対策が有効です。
またウニは岩の下の隙間に入り込んでいることが多いので、そういうところに安易に手足を入れないことも大事ですね。
もし刺されてしまったら
刺されてしまったらまず、速やかに陸に上がります。
そして、病院に行きましょう。
この時、余裕があれば患部に残っているトゲをピンセットなどで除去しましょう。その際、トゲが折れて皮膚の中に残ってしまわないように慎重に行います。
難しい場合は無理に自分でやろうとせず、病院でお医者さんにとってもらうことをおすすめします。
ガンガゼ・ラッパウニ | |
危険度 | ★★☆☆☆ |
遭遇率 | ★★★★☆ |
クラゲたち
危険性
ハブクラゲ。美ら海生き物図鑑より引用
これは言わずもがなですね。
沖縄では特に「ハブクラゲ」が毒を持つクラゲとして代表的。死亡例のある危険なクラゲですが、シュノーケリングできる海岸にもまれに現れることがあります。
触手に毒針を持っていて、地肌で触れると刺されて炎症を引き起こします。
ハブクラゲの触手は海の中では数メートルほどと非常に長く伸びます。
そのため気づいた時には海の中でバチッと電流が走ったような痛みに襲われ、ハブクラゲに刺されているということが起こります。
またそのショックでパニックになり、おぼれてしまう危険性もあります。
対策
ハブクラゲ。美ら海生き物図鑑より引用
対策は非常に簡単で「地肌を出さないこと」です。シュノーケリング時にはウエットスーツやラッシュガードなどで地肌を覆いましょう。
それだけでもクラゲの触手が持つ毒針は貫通しません。
またもし刺されてパニックになってもおぼれないように、「ライフジャケットを着用する」のも重要です。
もし刺されてしまったら
1.速やかに陸に上がる
2.患部に残った触手を海水で流す、指の腹でつまむなどして除去する
3-1.(ハブクラゲの場合)患部に酢(調味料の酢でOK)をかけながら病院へ
3-2.(刺された種が不明の場合)病院へ
刺されてしまったときは、上記のような対策が可能です。
このとき注意するのが、触手を洗い流す際に水道水を使ってはいけません。これは触手を刺激してさらに毒針が刺しこまれる原因になります。
ハブクラゲの場合のみ、酢をかけると触手が不活性化します。が、その他のクラゲの場合は酢をかけてしまうと毒針を刺激する原因になるため注意が必要です。
クラゲの仲間 | |
危険度 | ★★★☆☆ |
遭遇率 | ★★☆☆☆ |
イモガイの仲間
危険性
今回紹介する中でも最凶クラスの危険生物です。
イモガイの仲間は肉食性の巻貝で、沖縄などのサンゴ礁域に生息しています。また毒の銛を打ち込んで魚をとらえて食べるという生態を持っています。
この毒の銛がガチでヤバく、特に猛烈な毒を持つ「アンボイナガイ」では何度も死亡事故が起きています。なぜ魚をとらえるだけなのにそんなにヤバい毒を持ってしまったのか…。
対策
対策法は「イモガイに似た貝には近づかない」「手足をつく前に都度いないか確認する」というくらいです。
イモガイはツルっとしたスイートポテトみたいな形をしているので、そういう貝には手を出さないようにしましょう。
もし刺されてしまったら
刺されると最初は蚊に刺されたような弱い痛みがあり、20分ほどで症状が出てきます。
そのため海の中で何かに刺された感覚があったら、速やかに陸に上がり即病院に行きましょう。
その際には患部よりも心臓に近いところをひもなどで縛り、ポイズンリムーバーがあれば患部から毒を吸いだしましょう。
イモガイの仲間 | |
危険度 | ★★★★★ |
遭遇率 | ★★☆☆☆ |
ヒョウモンダコ・オオマルモンダコ
危険性
ヒョウモンダコ。えのすいトリーター日誌より引用
太平洋側の温かい海に生息するタコの仲間で、口や筋肉にフグと同じ猛毒を持っています。
そのためタコに噛まれたり、タコを食べたりすると危険。海外では死亡例もあるようです。
オオマルモンダコ。美ら海生き物図鑑より引用
いかにも「毒持ってるぜ!!!」という派手な模様の写真をよく目にしますが、これは興奮したときの模様。
普段は非常に地味な色合いで見つけるのはなかなか難しいです。
対策
対策としては「手足をつくときに都度いないか確認する」のが基本ですが、「マリンシューズを履く」「肌を覆う」のも有効。
決して凶暴なわけではなく、危険を感じると噛んでくる可能性もあるだけなので、仮に見つけたときは無理にちょっかいをかけなければ大丈夫です。
ヒョウモンダコ・オオマルモンダコ | |
危険度 | ★★★☆☆ |
遭遇率 | ★★☆☆☆ |
モンガラの仲間
危険性
あまり馴染みがないと思いますが、モンガラというのは魚のひとつのグループです。沖縄のようなサンゴ礁域に生息している仲間です。
シュノーケリングできるような浅い海岸にも生息していて、実はダイバーには非常に恐れられている仲間です。
というのも、夏の繁殖期に卵を守っているメスが非常に凶暴になり、人間にも襲い掛かってくるんです。
これは私が沖縄の有名なシュノーケリング・ダイビングポイントの「ゴリラチョップ」で遭遇した80cmくらいあるゴマモンガラ。
遭遇した時にはビビりましたが、速やかにその場を立ち去ることで事なきを得ました。じわじわと追いかけてきたときには相当肝を冷やしましたが…。
だってこの歯。ヤバいでしょ。これで噛みつかれたらウエットスーツは破れるでしょうね。地肌ならまず流血します。
またゴマモンガラだけではなく、近縁種のムラサメモンガラやクラカケモンガラなどにも注意が必要。
これらの種類は30cmくらいと小型ですが、その分もっと浅い海岸にもいるため出くわす可能性が高いです。
対策
対策は「近づかないこと」「見かけたら速やかに立ち去ること」ですね。またもし噛まれてもケガをしにくいように「肌を覆う」ことも重要。
彼らからすると一生懸命に卵を守っているところに、自分の何倍も大きい生きものが近寄ってきているという危機的状況。
勇気を出して立ち向かってきている彼らに敬意を持って、刺激しないようにその場を速やかに立ち去りましょう。
モンガラの仲間 | |
危険度 | ★★☆☆☆ |
遭遇率 | ★★★★☆ |
オニダルマオコゼ
危険性
イモガイと同じく最凶クラスの危険生物。沖縄などのサンゴ礁域に生息する魚です。
背びれのトゲに毒を持ち、これが非常に強烈で死亡例もあります。
そしてこの生きものの危険性を何より高めているのが、この見た目。岩のような見た目で判別が難しいため、磯遊びやシュノーケリング中に気づかずに踏み抜いてしまうのです。
トゲは非常に硬く、サンダルやマリンシューズを容易に貫通します。
ちなみに上の写真ではここに顔があります。わかりましたか?
対策
対策としては磯遊びやシュノーケリング中、「手足をつく際には細心の注意を払う」ことです。
もし刺されてしまったら
基本的には速やかに陸に上がり、即病院に行きましょう。
応急処置として、患部を50℃ほどの熱めのお湯(やけどしない範囲で熱いほど良い)につけると痛みが和らぎます。救急車を待っている間にやっているといいかもですね。
患部を温められればなんでもいいので、貼るカイロなどもおすすめです。
オニダルマオコゼ | |
危険度 | ★★★★☆ |
遭遇率 | ★★☆☆☆ |
サンゴ・フジツボ・コケなどの付着生物
危険性
今回紹介する中では最も出くわす可能性が高いというか、シュノーケリングすると100%出くわす危険生物です。
でも毒があるわけではありません。
これは「転んだ時の危険」ですね。
サンゴやフジツボなどはそこそこ鋭く、転んだ時に手をついたりすると間違いなく流血沙汰のケガになります。
また岩などに生えるコケはマジで想像の5000倍滑ります。
対策
対策としては「水辺を歩くときは慎重に」「マリンシューズを履く」「肌を覆う」などがありますね。
中でもマリンシューズを履くと結構滑りにくくなるのでおすすめです(それでも滑るので注意)。
正直、どんな毒を持つ生物より、どんな武器を持つ生物より、よっぽど出くわす可能性が高く、よっぽど危険です。ビーサンやはだしで水辺に近づくのは絶対にやめましょう。
サンゴ・フジツボ・コケなどの付着生物 | |
危険度 | ★★★★★ |
遭遇率 | ★★★★★ |
危険生物対策まとめ
今までご紹介してきた危険生物たちの対策をまとめます。
危険生物対策まとめ!
・肌の露出は最小限に!ウエットスーツやラッシュガードを着用
・絶対にマリンシューズを履く!
・襲われてしまってもおぼれないように、ライフジャケットを着用する!
・手足を岩や地面につく際は、事前に危険生物がいないかよく確認!
・もし危険生物と遭遇したらその場を速やかに立ち去る!
・刺されたり噛まれたりしてしまったら、速やかに陸に上がり適切な医療機関を受診!
この中でも、肌の露出を抑え、マリンシューズを履く対策は多くの生きものに共通して有効です。
また事前によく確認してから手足をつくことも重要。ライフジャケットの着用でおぼれないようにするのも大事です。
そして危険生物と出くわしたり、襲われたしたら速やかにその場を立ち去り、場合によっては医療機関をしっかりと受診しましょう。
そして最後に強調しておきたいのは、
「生きものは人間に攻撃しようと思って攻撃しているわけではない」
という点です。
あくまでも彼らには彼らの生活があり、そこに我々人間がシュノーケリングなどでお邪魔させてもらっているという立場。
そして人間が気づかずに手を出してしまった結果、彼らも身を削って反撃することで命を守っているんです。
サンゴやフジツボなども、我々が不用意に踏み込むことで壊してしまったり殺してしまったりするかもしれません。
だから必要以上に恐れすぎず、適切な知識をもって、適切な対策をすれば、重大な事故のほとんどは防げます。
シュノーケリングをする際は生きものたちに敬意を持って、私たちも、生きものたちも、安全に楽しめるようにしましょう!
まとめ
*肌の露出は最小限に!ウエットスーツやラッシュガードを着用
*絶対にマリンシューズを履く!
*襲われてしまってもおぼれないように、ライフジャケットを着用する!
*手足を岩や地面につく際は、事前に危険生物がいないかよく確認!
*もし危険生物と遭遇したらその場を速やかに立ち去る!
*刺されたり噛まれたりしてしまったら、速やかに陸に上がり適切な医療機関を受診!
今回はシュノーケリングをするときに気を付けるべき危険生物とその対策についてお話ししました。
どの生物にも注意が必要ですが、基本的な対策はどれも同じなので、むやみに恐れずきちんと対策すれば大丈夫。
しっかり対策してマリンレジャーを満喫しましょう!
▼沖縄でおすすめのシュノーケリングポイントたち
▼シュノーケリングするときに必要な道具